The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
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Ⅰ (15/39)
身体強化訓練が終わる頃には、俺とアシベルは死体のようになっていた。
「駄目だ~…。もう一歩も動けな~い…」
「誰か~…。誰か引き摺ってくれ~…」
「ったく…。なんて情けない奴らだ」
エルスキーは嘆かわしい、と顔に手を当てて溜め息をついた。
そんなこと言われたって。あんな階段ダッシュさせられたら、誰だってそうなる。
すると、そこに。
「な~にうだってんの?」
我らが女王様、ミューリアがやって来た。
「ミューリアさぁん…。俺は死にました」
「俺も死にました~」
「何々?男子は何の訓練だったの?」
ちなみに、身体強化訓練は男女別でそれぞれメニューが組まれるので、ミューリアは俺達がスパルタ階段ダッシュさせられたことを知らない。
「階段ダッシュ10本」
へばっている俺達の代わりに、エルスキーが答えてくれた。
「へ~ぇ。そりゃ大変だったわね」
ミューリアは笑いながら言った。他人事だと思って。
「女子は何だった?」
「テニスよ。体力作りの為のね」
テニスだと?
俺とアシベルはがばっ、と起き上がって抗議した。
「ずるい!男女差別だ!」
「そーだそーだ!」
「男女差別って…。女子にあの過酷な階段ダッシュをやらせるつもりかよ」
「違いますよ!俺達もテニスやりたい!」
「そーだそーだ!」
「…そっちかよ…」
俺達が階段ダッシュさせられてる間に、女子は優雅にテニスをしていたなんて。
なんて妬ましい。俺達もテニスやりたかった。
階段ダッシュなんて、やらなくて良いじゃない。皆で楽しくテニスをやれば。
「ミューリアさん。今度身体強化訓練で女子がテニスやったら教えてください。俺達にもやらせろって、三人で教官に抗議しに行きますから」
「そーだそーだ!」
「俺は行かねぇから。お前は二人で行けよ」
酷い。裏切り者。
更に。
「馬鹿ね。抗議して受け入れられる訳ないでしょ」
ミューリアも、この呆れ顔。
なんてことだ…。俺達の心の叫びは、誰にも届かないと言うのか。
「それより、二人共。そろそろ行くわよ」
「…?」
行くって?何処に?
「忘れたの?今日の放課後は図書室で勉強会でしょ」
「あ…」
そういえば…そんな約束してたな。
俺とエルスキー、アシベル、ミューリアの四人で勉強会しようって。
もう遠い過去の出来事のように思える。
「…いや~…。今日は疲れてますし~…」
「試験近いんだからやらなきゃ駄目よ。あんた、前の試験も赤点ギリギリだったでしょ」
そういえばそうでしたね。
「俺は赤点だったけどね!」
「威張って言わない」
べしっ、とはたかれるアシベル。
「まぁ、俺もそれなりに疲れてるけどさ…。試験近いし、やんねーと不味いよなぁ」
エルスキーは苦笑ぎみにそう言った。
おのれ…。今日はやめとこうよって言ってくれよ。真面目か。
「ほら立ちなさい、行くわよ」
「やだよ~」
「疲れた~」
「我が儘言わない!」
ミューリア女王陛下に一喝され、俺達は半泣きで、渋々図書室に行った。
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