The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
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Ⅰ (18/39)
「…」
俺が向かったのは、当然自宅である。
でもその自宅は、例のワンルームマンションではなかった。
暗い夜道を歩き、向かった先は街灯もほとんどない暗がりだ。
健全な高校生が、足を踏み入れるような場所ではない。
ビルが立ち並ぶその場所で、俺は足を止めた。
一軒の店だった。
目を凝らさなければ見えないような看板には、法外な数字が刻まれていた。
所謂、女の子と遊ぶ為の店、だ。
繰り返し言うが、当然ながら、健全な高校生が来るような場所ではない。
高校生に払えるような値段ではないし、そもそも、お金を持っていたとしても、高校生なら門前払いを食らうだろう。
それに俺、制服着てるし。
普通なら、一歩足を踏み入れるなり、ボーイに摘まみ出されるところだ。
でも俺は、躊躇わずにその重い扉を開けた。
中に入るなり、黒い服を着た屈強なボーイ達の視線が集まった。
普通なら、高校生が来るような店じゃない、と怒鳴られて引っ張り出されるところだが。
中にいた者達は、全員が俺をさっと見た。
そして、次にしたことは。
俺を摘まみ出す、ではなく。
俺に向かって、整然と最敬礼をした。
俺はそれを見て、妖しく笑った。
「ご苦労様ですね、皆さん」
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