The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
sideルレイア
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Ⅰ (19/39)
俺の名前は、ルナニア・ファーシュバル。
私立ランドエルス騎士官学校の学生である。
けれどもそれは、隠れ蓑としての肩書き。
本当の名前。そして、本当の職業は。
「…ま、言うだけ野暮ってもんですよね」
俺は瞳の色を変えるカラーコンタクトを外し、制服の白いシャツの第一ボタンを開ける。
VIP仕様の革張りのソファに腰掛けると、俺の横にはべるように、左右に二人の女が座った。
二人共、ここで働いている商売女だ。
胸が大きく開いた、身体のラインがくっきりと見えるドレスをまとい、髪も丁寧にセットしてある。
二人はそれぞれ俺の片腕を抱き、豊かな胸やむっちりとした太股を俺の身体に押し当ててきた。
同時に、華やかと言うよりは妖艶な香水の香りが漂ってきた。
それでいて、決して下卑た印象は受けない。当然だ。俺がそのように教育したのだから。
女を売るだけなら、馬鹿な女でも出来る。
そういう女に群がるのは、金のない、女にちやほやされたいだけの豚みたいな男だけ。
そしてそんな風俗店は、いくらでも、何処にでもある。
それじゃあ駄目なのだ。見る目のある、つまり金のある男は、上品な女に魅力を感じるものだ。
自分がそうだからよく分かる。
だからうちで働いている女には、上品に女を魅せる方法を教え込んだ。
お陰で、俺が作った風俗店は何処も、非常に良い利益をあげている。
そう。俺が作った風俗店。
ここは、俺が出資して創業した風俗店なのである。
「どうぞ、旦那様」
「どうも」
ボーイの一人が、グラスに入った飲み物を持ってきた。
俺はそれを、一気に半分ほど飲み干した。
中身は、勿論アルコールである。
「フードは何かお持ちしましょうか?」
「うーん。まぁ適当にいくつか。夕食摂ってないので」
「かしこまりました」
「あなた達も好きなもの頼んで良いですよ」
横ではべっている女達にも告げる。
女達は笑顔で応えて、それじゃあお言葉に甘えて、と飲み物を頼んだ。
なんとも愛嬌のある顔であることだ。まぁ、そのように教育したからなのだけど。
二人共、仕事でこうしているのではない。オーナーに媚を売っている訳でもない。
それは、俺の流儀ではない。
二人は心から俺に惚れているのだ。仕事でなくても、俺を愛し、俺に尽くしたいと思っている女達だ。
そんな女達は、国内に両手で数えられないくらいいる。
両手が10本あっても足りないだろう。
まぁ、それが俺の仕事ってね。
「…エリュシア」
「はい」
俺は、いつの間にか影のように後ろに控えていた女に声をかけた。
その女、俺の下僕であるエリュシアは、そっと俺の前に回った。
「今日は俺に何か、連絡はありました?」
「はい。ルルシー様から…」
俺はちっ、と舌打ちした。
「先に言えよ」
彼女が謝る前に、俺はエリュシアの胸にぼふっ、と手を入れた。
エリュシアの胸の谷間に仕込んでいたスマホを取り出し、ロックを解除する。
すると、そこには我が愛しのルルシーからのメッセージがあった。
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