The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…?」
いきなりやる気をなくした俺に、ユーシャは戸惑いながら起き上がった。
「ルナニア…さん?」
「ユーシャ・ルフス・アイヒベルガーさん。あなたはシューレン・ベルント・アイヒベルガーという人間のことを知っていますね?」
「え?」
ユーシャは酷く混乱していた。何で突然そんな話を始めるのかと。
だが、俺にとってはこれ以上に大事な話などないのだ。
「知っていますね?」
「あなた、どうして…兄の名前を?」
「そう。知らないはずがありませんね。あなたのお兄さん…。あなたが大好きで、あなたを大好きなお兄さん」
そして、俺が大っ嫌いな男だ。
憎くて憎くて。
憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて堪らない人間だ。
「馬鹿で下衆で愚図で、人でなしで役立たずで落ちこぼれで、ゴミでクズでカスで最低の糞野郎で…人類の恥みたいな人間のことですよ」
「…!?」
何故、知りもしないはずの自分の兄をこれほど罵倒するのか。
ユーシャはそれが分からなかったのだろう。驚愕の眼差しで俺を見た。
「どうして…どうしてそんなことを言うの?あなた、どうして兄のことを知ってるの」
「…」
「兄を侮辱するのはやめて。私のお兄様は誰より立派な人で、優しくて勇敢な人なんだから…」
「そりゃ大層『立派』な人でしょうよ。あんな糞野郎、他に見たこともないですしね」
奴に並ぶド畜生と言ったら、ベリアスと、あの死んだ教官と、あとはオルタンスくらいのものだ。
人を傷つけることを楽しんでいたぶん、オルタンスより最低だ。
「あなたは自分の兄が、学生時代に何をしていたのか知らないんでしょうね」
知っていたら、ここまであの男を擁護することは出来まい。
すると案の定、ユーシャは自分の信じる兄の姿を並べ始めた。
奴の、都合の良い、綺麗な部分だけを。
「学生時代…?お兄様は優秀な人だったわ。誰より優しくて、クラスでも人気者で、たくさんお友達もいて…。誰からも慕われて、尊敬された人だって、」
「黙れ!!!」
怒号をあげると、ユーシャは弾かれたようにびくっ、とした。
そして、怯えたような目で俺を見つめた。
あのルナニア・ファーシュバルが怒鳴り声をあげるなんて、信じられまいな。
「優しくて人気者?誰からも慕われた?まるで奴が聖人か何かのような口振りですね。見せてやりたいですよ。奴がどんなに醜悪な顔で、この俺をリンチしていたのかを」
俺は今でも、はっきりと思い出せる。
俺の記憶にあるあの男は、いつだって俺の憎しみそのものだった。
「どう…いうこと?お兄様に会ったことがあるの…?」
「毎日のように顔を合わせていましたよ。あのろくでなしと。」
「毎日…?どうして?だってお兄様が学校に行っていたのは、もう何年も前なのに」
俺は、その質問には答えなかった。
「ところでユーシャさん。あなたは先日までクラスでいじめに遭っていましたね?」
「え、え…?」
「あのとき、あなたをいじめている人に対して、どんな気持ちを抱いていましたか?慕ってた?それとも尊敬してました?あなたの理屈ならそうならなきゃおかしいですよね」
「何の話なの?ルナニアさん、教えて。あなたはどうしてお兄様のことを…」
「答えろ」
殺意を込めた目で睨むと、ユーシャはひっ、と声をあげた。
俺の豹変が信じられないようだった。我ながら、ルナニアというのは生温い人格であったことだ。
「…憎かったわ。彼女達のこと、許せなかった。大嫌いだわ」
ユーシャは、絞り出すような声で本音を漏らした。
いきなりやる気をなくした俺に、ユーシャは戸惑いながら起き上がった。
「ルナニア…さん?」
「ユーシャ・ルフス・アイヒベルガーさん。あなたはシューレン・ベルント・アイヒベルガーという人間のことを知っていますね?」
「え?」
ユーシャは酷く混乱していた。何で突然そんな話を始めるのかと。
だが、俺にとってはこれ以上に大事な話などないのだ。
「知っていますね?」
「あなた、どうして…兄の名前を?」
「そう。知らないはずがありませんね。あなたのお兄さん…。あなたが大好きで、あなたを大好きなお兄さん」
そして、俺が大っ嫌いな男だ。
憎くて憎くて。
憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて堪らない人間だ。
「馬鹿で下衆で愚図で、人でなしで役立たずで落ちこぼれで、ゴミでクズでカスで最低の糞野郎で…人類の恥みたいな人間のことですよ」
「…!?」
何故、知りもしないはずの自分の兄をこれほど罵倒するのか。
ユーシャはそれが分からなかったのだろう。驚愕の眼差しで俺を見た。
「どうして…どうしてそんなことを言うの?あなた、どうして兄のことを知ってるの」
「…」
「兄を侮辱するのはやめて。私のお兄様は誰より立派な人で、優しくて勇敢な人なんだから…」
「そりゃ大層『立派』な人でしょうよ。あんな糞野郎、他に見たこともないですしね」
奴に並ぶド畜生と言ったら、ベリアスと、あの死んだ教官と、あとはオルタンスくらいのものだ。
人を傷つけることを楽しんでいたぶん、オルタンスより最低だ。
「あなたは自分の兄が、学生時代に何をしていたのか知らないんでしょうね」
知っていたら、ここまであの男を擁護することは出来まい。
すると案の定、ユーシャは自分の信じる兄の姿を並べ始めた。
奴の、都合の良い、綺麗な部分だけを。
「学生時代…?お兄様は優秀な人だったわ。誰より優しくて、クラスでも人気者で、たくさんお友達もいて…。誰からも慕われて、尊敬された人だって、」
「黙れ!!!」
怒号をあげると、ユーシャは弾かれたようにびくっ、とした。
そして、怯えたような目で俺を見つめた。
あのルナニア・ファーシュバルが怒鳴り声をあげるなんて、信じられまいな。
「優しくて人気者?誰からも慕われた?まるで奴が聖人か何かのような口振りですね。見せてやりたいですよ。奴がどんなに醜悪な顔で、この俺をリンチしていたのかを」
俺は今でも、はっきりと思い出せる。
俺の記憶にあるあの男は、いつだって俺の憎しみそのものだった。
「どう…いうこと?お兄様に会ったことがあるの…?」
「毎日のように顔を合わせていましたよ。あのろくでなしと。」
「毎日…?どうして?だってお兄様が学校に行っていたのは、もう何年も前なのに」
俺は、その質問には答えなかった。
「ところでユーシャさん。あなたは先日までクラスでいじめに遭っていましたね?」
「え、え…?」
「あのとき、あなたをいじめている人に対して、どんな気持ちを抱いていましたか?慕ってた?それとも尊敬してました?あなたの理屈ならそうならなきゃおかしいですよね」
「何の話なの?ルナニアさん、教えて。あなたはどうしてお兄様のことを…」
「答えろ」
殺意を込めた目で睨むと、ユーシャはひっ、と声をあげた。
俺の豹変が信じられないようだった。我ながら、ルナニアというのは生温い人格であったことだ。
「…憎かったわ。彼女達のこと、許せなかった。大嫌いだわ」
ユーシャは、絞り出すような声で本音を漏らした。