The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「あなたに会えて本当に良かった。あなたがべらべらとシューレンのことを喋ってくれましたからね。あのクズのことを。これで俺は、奴に復讐出来る」

「お兄様を…どうするつもりなの?」

「殺しますよ。当たり前でしょう?あんなクズが今も呼吸をしているなんておこがましい」

同じ時代に生きていることさえ、耐えがたいほどの苦痛だ。

俺があまりに簡単に「殺す」と言ったものだから、ユーシャはぞっとしたような顔をした。

「やめて…。お願い。お兄様には何もしないで」

「はぁ?あなた、この期に及んでよくもあれを庇えますね」

「何かの間違いよ!お兄様はそんな…酷いことなんてする人じゃない」

「お前の言い分なんか知るか」

間違いだろうと誤解だろうと、何でも良い。

俺が知っているのは、事実だけだ。

「お願いよ…。やめて。お兄様はもう充分苦しんだわ。私に出来ることなら何でもするから、だから…」

「シューレンの苦しみが、この俺の味わった苦痛に並ぶとでも!?足元にも及ぶものか!」

俺は思わず、再び怒声をあげてしまった。

ユーシャは自分の兄のやったことを信じてはいなかった。でも…俺の目に宿る復讐の炎は、紛れもなく本物だった。

「それに…心配しなくても、シューレンには何もしませんよ」

「…」

俺は、袖口に隠していた仕込みナイフを手にした。

きらりと鋭く光る刃に、ユーシャの顔が恐怖に染まった。

「大好きな妹の死体を見たら…あの厚顔無恥な男でも、少しくらい自分の犯した罪を反省する気になれるんじゃないですかね」

「や、やめて」

「本当は、手酷く抱いて、遊んでから殺すつもりだったんですけど…。お前みたいな薄汚い女、抱く気にもならない」

だから、もう殺す。

「嘘よ、こんな…。ルナニアさんは、だって、お兄様みたいに、優しくて…」

みっともなく涙をぼろぼろ流しながら、ユーシャは後ずさった。

「そりゃありがとうございます。でも俺は、始めからそのつもりだったんですよ。あなたがシューレンの妹だと聞いたときから。あなたがいじめられているのを見て、俺がどれほど喜んだか分かります?ざまぁないですよ。兄の因果が妹に報いたってことですね」

「…!」

「全部演技で、全部俺の計画です。あなたのその…希望から絶望に突き落とされた顔を見たかった。もう少しましだと思ったんですけど、ブスはやっぱりブスでしたね」

ユーシャは這うようにベッドから降り、下着姿のまま部屋の出口を目指した。

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