The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
さて、綺麗になったアリューシャは。
サレオスさんとやらがご飯を作ってくれたので、それを食べた。
残飯じゃないものを食べるって、なんだか変な感じ。
美味しいのか美味しくないのかよく分からん。
少なくとも、温かいものを食べたのは初めての経験だった。
「…それでその子、名前は?」
「ないんだって」
「成程…。じゃあ、名前つけてあげないといけないね」
アリューシャがもぐもぐと食べている間、『Sanctus Floralia』のメンバーはそんなことを話していた。
…名前。名前、ね。
「いやいや。私が人の名前をつけるなんておこがましいこと、とてもじゃないけど出来ないよ」
「でも、何か呼び名をつけないと」
「じゃあ、名無し君で」
シュスリー命名。名無し君。
この瞬間、ずっと名無しだったアリューシャは、「名無し君」という名前をもらった。
なんだか名前にはなっていないような気がするが、まぁ気にするな。
呼び名をつけられるってことは、誰かが呼んでくれるってことだから。
「それより名無し君、そこにスプーンとフォークかある訳だけど。それを使って食べる気はない?」
「あ?」
ふぉーくとすぷーん…って何だ?
「あぁ、成程。使う気がないんじゃなくて、使えないんだね。後々練習しよう」
当時のアリューシャは、フォークやスプーンの使い方なんて知るよしもなかった。
物を食べるときはいつだって、ワイルドに手掴みだった。
おまけに、あちこちにぼろぼろ落としていた。
テーブルマナーの「て」の字もない。
アリューシャにそんなものを教えてくれる人は、今まで一人としていなかったのだから、無理もない。
「その子に教えることは色々あるね。日常生活に必要なことは勿論…。殺しの技術も」
「だな」
いきなり、物騒な単語が出てきた。
ただの一般家庭のように見えるが、ここは一応、マフィアの本部なのだ。
「名無し君、人を殺した経験は?」
「ない」
動物殺したことなら無数にあるけど。
「じゃあ、人を殺せる自信は?」
「ない」
即答であった。
嘘でも「あります!」と言った方が良かったのかもしれないが。
ないものはない。だってやったことないんだもん。
シュスリーは呆れるかと思ったのだが、しかし彼(彼女?)は楽しそうに笑い出した。
何笑ってんだ。
「良いことだ。殺したこともないのに殺せる自信があるなんて、そんなこと言われても信用出来ないしね。そもそも人を殺せる自信なんて、ない方が良いよ」
「…」
よく分からないが、アリューシャの返事がお気に召したようだ。
「よし。大丈夫だ名無し君。私が教えてあげよう。君が生きていくのに必要なことを全て」
「…ふーん…」
アリューシャには、何の実感もなかった。
ただただ、目の前の食べ物を口の中に詰め込むことの方が、アリューシャには重要だったのだ。
サレオスさんとやらがご飯を作ってくれたので、それを食べた。
残飯じゃないものを食べるって、なんだか変な感じ。
美味しいのか美味しくないのかよく分からん。
少なくとも、温かいものを食べたのは初めての経験だった。
「…それでその子、名前は?」
「ないんだって」
「成程…。じゃあ、名前つけてあげないといけないね」
アリューシャがもぐもぐと食べている間、『Sanctus Floralia』のメンバーはそんなことを話していた。
…名前。名前、ね。
「いやいや。私が人の名前をつけるなんておこがましいこと、とてもじゃないけど出来ないよ」
「でも、何か呼び名をつけないと」
「じゃあ、名無し君で」
シュスリー命名。名無し君。
この瞬間、ずっと名無しだったアリューシャは、「名無し君」という名前をもらった。
なんだか名前にはなっていないような気がするが、まぁ気にするな。
呼び名をつけられるってことは、誰かが呼んでくれるってことだから。
「それより名無し君、そこにスプーンとフォークかある訳だけど。それを使って食べる気はない?」
「あ?」
ふぉーくとすぷーん…って何だ?
「あぁ、成程。使う気がないんじゃなくて、使えないんだね。後々練習しよう」
当時のアリューシャは、フォークやスプーンの使い方なんて知るよしもなかった。
物を食べるときはいつだって、ワイルドに手掴みだった。
おまけに、あちこちにぼろぼろ落としていた。
テーブルマナーの「て」の字もない。
アリューシャにそんなものを教えてくれる人は、今まで一人としていなかったのだから、無理もない。
「その子に教えることは色々あるね。日常生活に必要なことは勿論…。殺しの技術も」
「だな」
いきなり、物騒な単語が出てきた。
ただの一般家庭のように見えるが、ここは一応、マフィアの本部なのだ。
「名無し君、人を殺した経験は?」
「ない」
動物殺したことなら無数にあるけど。
「じゃあ、人を殺せる自信は?」
「ない」
即答であった。
嘘でも「あります!」と言った方が良かったのかもしれないが。
ないものはない。だってやったことないんだもん。
シュスリーは呆れるかと思ったのだが、しかし彼(彼女?)は楽しそうに笑い出した。
何笑ってんだ。
「良いことだ。殺したこともないのに殺せる自信があるなんて、そんなこと言われても信用出来ないしね。そもそも人を殺せる自信なんて、ない方が良いよ」
「…」
よく分からないが、アリューシャの返事がお気に召したようだ。
「よし。大丈夫だ名無し君。私が教えてあげよう。君が生きていくのに必要なことを全て」
「…ふーん…」
アリューシャには、何の実感もなかった。
ただただ、目の前の食べ物を口の中に詰め込むことの方が、アリューシャには重要だったのだ。