The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
まぁ、それなりに険しい道のりだった。

アリューシャは狙撃の練習だけじゃなくて、テーブルマナーやら読み書きやら、他にも色んなことを学んでいたから。

どれもを一生懸命やるのは無理だった。

だから、今でもお勉強はかなり苦手である。

しかもその頃、アリューシャが熱をあげていたのは狙撃の方ばっかりで。

その他は、結構おざなりになっていた。

それでもなんとか毎日勉強して、最低限の読み書きは出来るようになった。

というのも、シュスリーが一度、馬鹿にしてきたことがあるからだ。

「こんなの読んでみる?」と狙撃の技術に関する指南書みたいなのを持ってきたのだが、アリューシャは読めなかった。

「何て書いてあるのか分からん」と素直に言うと、

「え。お前まだこんなのも読めないのw」と馬鹿にしてきた。

イラッと来たので、それ以来真面目に勉強することにした。

その頃には、アリューシャが集中力を保てる時間も少しずつ長くなってきていた。

最低限の生存欲求が満たされるようになって、それ以外のことに頭を使う余裕が出てきたのだ。

そして、狙撃の訓練も順調に進んでいた。

と言うか、順調だと思い込んでいたのである。

どういうことかと言うと、アリューシャは外しまくったとしても、そんなにショックを受けなかった。

普通の人なら、昨日まで出来たことが今日出来ないと、スランプだ、不調だと焦るのだろうけど。

アリューシャは焦らなかった。

上手く行かない日があっても、なんか今日調子悪いなぁ。まぁそういう日もあるだろ。明日当てれば良いや。

と、気楽に考えていた。

シュスリーも同様だった。アリューシャがどれだけ外しまくろうと、怒りもしないし嫌味の一つもなかった。

「好きなだけ外せ。外したぶんだけ上手くなる」この一言を言うばかりだった。

ただ馬鹿にしてきたことは多々ある。「お前外し過ぎw」とかなんとか。

うるせぇ。好きなだけ外せって言ったのお前じゃ。

とにかく、アリューシャは能天気だった。能天気に、毎日訓練に励んでいた。

いつか上手くなれば良い。シュスリーみたいに、これが自分の誇る唯一の取り柄だって言えるようになるまで。

上手くならなくたって、それで失うものはアリューシャには何もない。

そんな風に、気楽に考えていたのだ。
< 259 / 561 >

この作品をシェア

pagetop