The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

sideアイズレンシア

ーーーーーーー…地面に倒れたマネキンを見て、私はぞっとした。

…事前に情報がなければ、ここに倒れていたのは本物のアシュトーリアさんだっただろう。

この日、『Sanctus Floralia』の刺客がアシュトーリアさんの暗殺計画を企てているという情報が入り、私達はすぐさま対策を講じた。

アシュトーリアさんの代わりのマネキンを用意し、暗殺者の襲撃に備えた。

それにしても…と、私は考えた。

今回は、暗殺計画に関する詳細な情報が流れてきていた。だから、こうして綿密な対策も出来た。

出てくる情報があまりにも詳細なので、私は情報の出所を詳しく辿った。

しかし、何処が出所なのか特定は出来なかった。

まるで、敢えて情報を漏らしたかのようだ。

何かの罠なのではないかと訝ったが、しかし…結果としては、情報の通りだった。

『アイズさん。スナイパーを捕らえました』

「分かった」

部下からの連絡が入り、私はひとまず、一息ついた。

「どう?アイズ。暗殺者はどんな子だったの?」

「あ…アシュトーリアさん」

車の中から、本物のアシュトーリアさんが優雅に出てきた。

一応襲撃されることを想定して、アシュトーリアさんを庇うように彼女の前に立った。

「暗殺者はまだ…見ていないので、分かりませんけど…でも」

「でも?」

「相当の手練れだと思われます。ここから狙撃ポイントはかなりの距離があるのに、このマネキン…正確に心臓を撃ち抜かれています」

倒れたマネキンの心臓部分に、風穴が空いていた。

驚嘆すべき精度だ。これほどの技術を持ったスナイパーは、『青薔薇連合会』にはいない。

「ふぅん…。きっと優秀な子なんでしょうね」

「恐らくは…」

「是非会ってみたいわね。スナイパー、生け捕りにしたんでしょ?私の前に連れてきて、アイズ」

にこにこ、とアシュトーリアさんはそう頼んだ。

「…分かりました」

彼女を殺そうとした暗殺者に会わせるなんて、私は反対だった。

しかし、危険だからやめてください、なんて言っても聞き入れる人ではなかった。

仕方ない。万全整えて、アシュトーリアさんの前にスナイパーを引き合わせるとしよう。
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