The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

sideアリューシャ

ーーーーー…アイズレンシア、ことアイ公とのファーストコンタクトを終えた後。

15分ほどして、アシュトーリアさんとの初対面を迎えた。





「…眠い…」

手足を拘束されているから、ろくに眠れもしない。

疲れた。

でもあの人…ライフルは捨ててないって言ってた。良かった。

ライフルが壊されてないなら、良いや。

いつか、別の人が使ってくれ。あれは捨ててしまうには惜しいからな。

アリューシャの頭の中には、そのことしかなかった。

『Sanctus Floralia』の仲間達が行方を眩ませたことについては、特に思うこともなかった。

彼らがアリューシャを捨てたなんて思ってはいなかった。

多分シュスリーは、最初からそのつもりで、アリューシャにこの任務を命じたのだ。

アリューシャは馬鹿だから、シュスリーが何のつもりでアリューシャを捨て駒にしたのか、その理由は分からない。

でもまぁ、別に…何でも良い。

『Sanctus Floralia』の本部が、あの家がもぬけの殻だったと聞いたときは、驚いたけど。

皆が生きて無事なのなら、良いや。

アリューシャはもう、充分人生を楽しんだ。

シュスリー達のお陰で、無学なゴキブリじゃなくて、人型のカカシくらいにはなれた。

なら、もう充分じゃないか。

元ゴキブリの身には、過ぎた幸せだ。

あとは是非とも苦しまずに殺して欲しいな~と思っていた。

そのとき。

「あら、本当。アイズの言った通りね」

「ふぁ?」

拷問室に、新たな来訪者がやって来た。

スコープで覗いた精巧なマネキンの顔がそこにあった。

…?これもマネキン?

さっき一回騙されたから、人間不信になってるぞ。

あ、でも今喋ったよな?

ということは。

「…本物?」

「えぇ、本物よ」

「へぇ~…」

本物なのか。だよね。

アリューシャもそう思ってたところだよ。

これが本物の、『青薔薇連合会』の首領かぁ…。美人じゃね?

『Sanctus Floralia』に足りないのはこの枠だな。

「あなた、何て名前なの?」

「さっきの人といい、何で名前聞くの?ないよ。チビ公か名無し君か、好きな方で呼んで」

「あら、可哀想に。名前がないの?」

「にゃい」

「あら~」

あらじゃねぇよ。何笑ってんだ。

「あなた、面白いわね」

「何が?顔が?」

生まれたときからこの顔なんですけど?

人の顔を貶すのは良くないと思うんだよね。

「ねぇ、あなたうちでスナイパーとして働く気はない?」

「…はぁ?」

さすがのアリューシャも、これは意外な申し出だった。

「うちでって…『青薔薇連合会』で?」

「そう。アイズ…さっきあなたに会いに来た子がね、あなたを推薦してきたの。あなたはうちに相応しい子だってね」

「…」

相応しい?あいつがそう言ったのか?

さっきのやり取りの一体何処に、アリューシャが『青薔薇連合会』に相応しいと判断出来るポイントがあったんだ?

あいつ、目ぇおかしいんじゃね?

「私もそう思うわ。どう?断ったらあなたはこのまま殺されるんだし、帰る場所もあなたにはない。なら、うちで働かない?」

「…」

何とか返事をしようかと、アリューシャはしばし考えた。
< 267 / 561 >

この作品をシェア

pagetop