The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…三つくらい、頼みたいことがあるんだけど良い?」

「そうね…。言ってみて」

頭を下げて感謝の言葉を述べなければならないはずなのに、こちらから条件を出すとは。

我ながら厚かましいことだ。

「あのライフル、返して」

「お気に入りなの?」

「お気に入りだよ」

アリューシャじゃなくて、シュスリーの、だけどね。

「良いわ。返してあげる。二つ目は?」

「『Sanctus Floralia』を追わないであげて欲しい。あんたの暗殺は、頼まれて請け負っただけで、元は大した組織じゃないんだ」

「自分を捨てた組織を庇うの?」

「違うよ。自分を拾ってくれた組織を庇おうとしてるんだ」

シュスリーはアリューシャを捨てたかもしれないが、でも最初に拾ってくれたんだ。

その恩を忘れちゃいない。

けれど、いくら頼まれただけとは言っても…この人を殺そうとしたのは事実。

見逃してはもらえないかもしれない。

しかし。

「分かった。それも良いわ。どうせあなたの組織は、大した規模でもないしね。マフィアと言うよりは学生の不良グループに過ぎない。あなたに免じて、彼らは逃がしてあげる」

「そっか。ありがと」

良かった。これでシュスリー達は無事だ。

生きてさえいれば良い。生きていれば、いつか何処かで再会も出来よう。

出来ないかもしれないけど。まぁ、それならそれでも構わない。

「それで、三つ目は何かしら」

「…贅沢なお願いなんだけど、良いかな」

「聞いてあげるわ。何?」

今までずーっと思ってて。シュスリーにも言えなかった、頼み事。

寒い路地裏の夜空を見上げながら。今にも落ちてきそうな気がして怖かった天井を眺めながら。

ずっと、願っていたことがある。





















「…私は、自分の名前が欲しい」

口に出すと、私の目から涙が溢れた。




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