The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…ユーシャ、一体何処行っちゃったのかしらね」

ミューリアは、心配そうな顔でそう言った。

よく言えたもんだな。お前、友達でも何でもなかった癖に。

いなくなった途端に仲良しだった振りか。

「家にも帰ってないらしいじゃん?なんか怖いよな」

「事情聴取なんて初めてされたよ。めっちゃ緊張した。ルナニアもそうでしょ?」

「えぇ、死ぬほどびびりましたよ。特に俺は、三回くらい聞かれましたし…」

ユーシャ・ルフス・アイヒベルガーが行方不明になってから、一週間。

ランドエルス騎士官学校では、突如として行方不明になった女子生徒の噂で持ちきりだった。

ユーシャは学校にも来ず、家にも帰っていない。行方も消息も分からない。

ランドエルスの学生達は、誘拐か、とか神隠しか、なんて好き勝手な噂をしていた。

そして、ユーシャと同じクラスだった俺達は、少なくとも皆一回ずつは警察から事情聴取を受けた。

特に、ユーシャと最後に会って話したと確認されている俺は、綿密な事情聴取をされた。

色んなことを詳細に聞かれたが、勿論、俺は正直になんて答えなかった。

大体、俺はユーシャの行方を知っている。

彼女は今頃、土の下だ。

何せ、俺が殺したのだから。

いやはや痛快だった。復讐ってのはあれだな。何回やっても楽しいもんだ。

ユーシャ殺害の件は、アイズレンシアに頼んで綺麗に隠蔽してもらったので、俺の関与がばれることはない。

こうして、素知らぬ風で涼しい顔をしていれば良いだけだ。

カセイは俺の犯行を知っているが、彼女が喋るはずがないし。

それに、今はこうして噂になっているが、もうしばらくもすれば、ユーシャのことなど皆忘れてしまう。

そうすれば、ユーシャは始めからいなかったことになる。

そんなものだ。人間なんてのはな。
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