The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「あぁぁ~…。討論会…めんどい」

アシベルは机に突っ伏して、そう嘆いた。

こいつは何に対しても、嫌だの面倒だの言うんだな。

何なら嫌じゃないのか、逆に聞いてみたいほどだ。

そんなことを聞いたら仮初めの友情に亀裂が入るから、口が裂けても言えないが。

「本当ダルいよな。やめて欲しいよ」

「仕方ないでしょ。ランドエルスの恒例行事なんだから」

エルスキーが溜め息を漏らすと、ミューリアがそれを諌めるように言った。

まぁ、今回の件については、俺もエルスキー達の気持ちが分からなくもない。

面倒臭いと言うより、俺にとっては…忌々しい、と言うのが近いがな。

「討論会はもう来月。そろそろ、準備を始めないとね」

討論会。

ランドエルス騎士官学校の恒例行事の一つで、俺達の学年が毎年行っている。

一体何について討論するのかというと…。

…大雑把に言うと、ベルガモット王家についてか、あるいは帝国騎士団について。

このどちらかについて討論する。

…要するに、ここが一応「騎士官学校」という位置付けであることを忘れてはいけないということだ。

俺に言わせれば、討論するまでもない糞みたいな議題だ。

誰だって、どぶ川のヘドロについてわざわざ取り上げて討論したりはしないだろう。それと同じ。

何でそんなこと、いちいち討論するんだ?

あんな奴ら、「総じてクズ」。この一言で全部終了じゃないか。

今更何を語ることがあると言うんだ。

他に何て言えば良いのか、俺にはさっぱり分からない。

しかも、ただ討論すれば良いというものではない。

この討論会は、報告会も兼ねているのである。

じゃあ何を報告するのか。

これも、討論会の議題と同じだ。

糞の王家と、ゴミの帝国騎士団について、グループで何かしらレポートを仕上げて、それを発表する。

「だな。じゃあそろそろ…図書館巡りするか」

「わーん。めんどい~」

今回は、アシベルが泣き言を言うのも分かる。

こういうのを、時間の無駄と言うのだ。

こんなにゆるゆるで甘ちゃん揃いのランドエルス騎士官学校だが、一応騎士官学校の一つなので。

たまにこうして、思い出したようにそれっぽいことをするのだ。

帝国騎士官学校にいた頃も、こういうことはよくやらされた。

あの頃はまだ、王家と帝国騎士団があんな汚物だとは知らなかったから、それなりに真面目にやったものだが…。

今となっては、ただただ無益な時間の浪費でしかない。

それともいっそ、奴らがいかに救いようのない無能の集まりであるかをレポートにしようか。

レポート用紙50枚くらいは軽く書けそうだが、残念ながらルナニアとしては、そんなことをするのは不可能だった。

つまり、真面目にやらなければならないのだ。

考えただけで、溜め息の一つでも出そうだった。

あぁ、ルルシー…。俺は今、無性にあなたに会いたいです。
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