The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
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Ⅰ (25/39)
紅茶を飲みつつ、マドレーヌを食べつつ。
ルルシーに急かされて、アシュトーリアさんはようやく肝心の用件を話し始めた。
「あんまり気が進まないのだけど、二人にお願いがあるの」
「はい」
お願い、ねぇ。
命令、と言わない辺りが実に彼女らしい。
エロいお仕事なら、何でもやるつもりであるが。
何だろうなぁ、と呑気にマドレーヌを齧る。
アシュトーリアさんのお願いは、俺が予想だにしないものだった。
「二人のうち、どちらかにね。学生になってもらいたいの」
「…」
…ガクセイ。
今、ガクセイって言ったよな?
まさか楽聖…じゃないよな?
楽聖の方が、まだましであるが。
これには、さすがのルルシーも目を丸くしてぽかんであった。可愛い。
「…学生、ですか?」
ルルシーはガクセイを学生と変換したようだった。そりゃそうだ。
「えぇ。高校生になって欲しいの」
…高校生。
色々言いたいことはあるが、まず第一に。
「…我々、高校生にしてはおじさんですよね。まぁ性欲だけは男子高校生にも負けない自信がありますが…」
「余計なことまで言わんで良い」
ルルシーにぺしっ、とはたかれた。
性欲だけじゃない。俺の場合、高校生のときより今の方がぴちぴちだよな。
「でも、ルレイアの言うことは事実です。高校生に成り済ますには、我々は年齢が行き過ぎてると思いますが…」
と、俺の言いたいことを丁寧な言葉で言い直すルルシー。
10歳とまでは行かないが、高校生にしては、5~6歳くらい老けてる。
数字にしてみれば僅かな差のように思えるが、高校生くらいの歳だと、その僅かな差でも結構顔つきが違って見えるものだ。
こいつ明らかに老けてね?と。
留年していたから、と言い訳するにしても…大学生ならまだしも、高校生だと5、6年も留年なんて、目立って仕方ない。
潜入任務なら、必要以上に目立つのは避けたいところだろう。
しかし。
「それは大丈夫。特殊メイクで、少し幼く見えるようにするわ」
さすがのアシュトーリアさん。その辺りは抜け目ない。
成程それなら、見た目は取り繕えるな。
「分かりました。それで…何処に潜入すれば?」
「その話をする前に、まずはこの任務の前提を確認しておかなきゃいけないわ」
前提、とな?
つまり俺達が派遣される理由か。
「箱庭帝国(はこにわていこく)が最近、うちにちょっかいを出してきてることは知ってるわよね」
アシュトーリアさんのその一言で、俺はこの任務の意図を理解した。
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