The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「他に、どんなこと調べたい?」

「現実的なこと考えたらさ、ちょっと…帝国騎士の給料事情とか知りたいよな」

という、エルスキーの意見である。

これは…確かに、一般市民は知りたいことかもしれない。

「アシベル、知ってる?」

「うちの伯父上は隊長だから、結構もらってるみたいだけど…」

国民の血税を、あんなおっさんになぁ。

給料泥棒も良いところだ。

「普通の平騎士はどうなんだろうな」

「一応公務員だから、それなりにはもらってるんじゃないの?」

ところが残念。役職のない平騎士は、一般企業の初任給にちょこっと色をつけたくらいしかない。

らしいよ。俺、入ったときから隊長だったから、給料割と良かったけどね。

給料だけはそれなりだというのが、あの糞帝国騎士団で唯一と言って良いほどの魅力だったかもしれないな。

まぁ、それも今ほどじゃない。

帝国騎士団で生真面目に働くより、夜のお店をいくつか経営した方がよっぽど儲かるぞ。

店が流行れば、の話だがな。

「給料事情は結構気になるかな~」

「その給料を何に使ってるかも気になるよな」

俺、給料何に使ってたかな。

あの頃は如何せん忙しくて、金を使う時間もなかった。

今ほどファッションにも気を遣ってなかったし…。

すると、そこでティモニーがばん、と机を叩いた。

「君達!さっきから聞いてたら、そんな子供の自由研究みたいなテーマばかり。もう少し真面目に考えようとは思わないの?」

ここに来て、ティモニーの真面目属性が発動したようだ。

だって、子供の自由研究みたいなもんじゃん。こんなの。

「遊んでるんじゃないんだよ?分かってる?」

「そりゃ分かってるけどさ…。じゃあ、ティモニーはどんなこと調べたいの?」

「そうだね…。聞いたところによると、帝国騎士団の隊長達は、通常業務とは別に、それぞれが様々な業界団体に所属して、活動しているそうなんだ」

うん。

よく知ってるね、そんなこと。

「中には、女性の人権活動に参加してる隊長もいるそうだよ」

うん?

なんか…聞き覚えがあるような、ないような。

「へぇ。女性の…。それは女性隊長?」

「いや、若い男性の隊長もやってたそうだよ」

…。

「そこで僕らは、帝国騎士団の隊長達が参加している業界団体について、調べてみるのはどうかな」

「おぉ…めっちゃそれっぽい。良いじゃん」

「良いわね。面白そうだわ」

「さんせーい!」

「…」

…それ、俺じゃん!という突っ込みをしなかった自分を褒めたい。

「ルナニアは?どう思う?」

この流れで俺に振るな。

と、言いたいところだが、言えないのが辛いところ。

「…良いんじゃないですかね」

こうして。

俺達のグループのテーマが、明確に決められたのだった。
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