The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

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 Ⅰ (26/39)

ルティス帝国の国土は、複数の国と接している。

その一つがアシスファルト帝国であり、そしてもう一つ。

それが、箱庭帝国である。

かの国はルティス帝国よりも、アシスファルト帝国よりも小さく、かなり閉鎖的な制度を取っている。

他国との交易も盛んではなく、国が特別に許可した貿易しか出来ない。

国民の生活は基本的に、国内だけで完結している。

だから、箱庭。

その閉鎖的な土地柄の為、両国の国民同士の行き来は稀だが、ルティス帝国はそれほど箱庭帝国を敵視してはいない。

むしろ、アシスファルト帝国と同じく友好国の一つとして親しくしているつもりでいる。

けれども俺達『青薔薇連合会』にとって奴らは、現状忌々しい余所者でしかない。

と言うのも、近頃、箱庭帝国の非合法組織、つまり俺達と同じマフィアが、ルティス帝国の裏社会に介入してくるようになったのである。

マフィアにとって、自分の縄張りを荒らされるというのは、顔に泥を塗られるどころではない屈辱的行為だ。

突然箱庭帝国のマフィアがルティス帝国に進出してきた理由については、我らが参謀、アイズレンシア曰く。

箱庭帝国は元々、ルティス帝国よりずっと政府が強い国であり、非合法組織の取り締まりが厳しい。

その為、元から箱庭帝国のマフィアは、肩身の狭い思いをしていたそうな。

そこに更に、最近箱庭帝国の政府が、非合法組織への弾圧を大幅に強化したとか。

その影響で、国内での弱体化を強いられた箱庭帝国のマフィアは、自分達の居場所と立場を確保する為、国外に、つまりルティス帝国に逃げてきたのだそうだ。

そもそもそのマフィアへの弾圧強化は、厄介な非合法組織を自国から追い払い、厄介払いをする為の政策だったのではないか、というのがアイズレンシアの意見だ。

つまり、こいつらに国内で暴れられたら面倒臭いし、お隣の国に押し付けちゃおう、ってなもんだ。

押し付けられたルティス帝国側にとっては、憤慨物だ。

だが、「何してくれてんだコラ」と文句を言おうにも、「我々そんなの知りませんから」としらばっくれられるのは目に見えている。

その辺は向こうも上手くやっている。

お前らんとこの政策のせいで、うちに厄介者が雪崩れ込んできたんですけど!なんて文句を言ったところで。

それが俺達のせいだって証拠でもあんのか?と逃げられるように口実を考えてある。

文句を言っても仕方ない。

しかしそのせいで、『青薔薇連合会』が少なからず被害を負ったのは確かだ。

なんとか対策を考えなければならないと思い始めてきたときに、今回の潜入任務の依頼である。





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