The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
毎度お馴染み、帝国騎士団隊長会議は。
今日も、楽しく紛糾していた。
「まさかルレイア・ティシェリーがランドエルスに潜入していたとは…」
「それを今日まで隠していたこと、我々への裏切りに値する」
案の定、ユリギウスとアストラエアは腹を立てていた。
こいつらはハゲるタイプだな。特におっさんの方。
「あの男の考えることだからな…」
しかし、オルタンスはこの程度の反応だった。
これくらいのこと、俺は平気でやってくる。
始めから、想定していたようだ。
「協力関係にある今、意図的に敵に関する情報を隠すなど、裏切り行為だ」
能天気なオルタンスに、アストラエアはそう抗議した。
「じゃあ、何をする?マフィアとの協力関係を破棄するか?そうすれば間違いなく、『青薔薇連合会』は『シュレディンガーの猫』と組むぞ」
「…」
既に、その下地は出来ているも同然だ。
今だって、『猫』は『連合会』と協力関係にあると思っているのだから。
それを本当のことにすれば良いだけ。そんなことは俺にとって簡単だ。
俺がその気になれば、帝国騎士団との縁を切って、いつでも『シュレディンガーの猫』と組んで、帝国騎士団を潰せるのだ。
「しかし、こちらには…『連合会』の人質が」
「人質?あの男を人質だとは思っていない。むしろ、脅しだ。彼は我々に突きつけられた拳銃と同じだ」
オルタンスが、ルルシーを客人待遇でもてなしているのは、そういう理由だった。
「どういう意味だ?」
「分からないか?あの男をどうにかすれば、ルレイアは最早誰にも制御不能だ。いかなる手段を使ってでも、我々を消しに来るぞ」
オルタンスはよく分かっていた。俺の性分というものを。
「ルルシーというあの男は、ルレイアの最後の安全装置だ。彼がいるから、まだルレイアは理性を保てているんだ」
「…」
そうまで言われては、アストラエアも引き下がるしかなかった。
「それよりも、ランドエルスのスパイについて情報を入手出来たことを素直に喜ぶべきだ。我々は、労力を使わずして…」
…と、オルタンスが言いかけたとき。
オルタンス直属の部下の一人が、受話器を片手に会議室に入ってきた。
「…オルタンス殿。緊急連絡が…」
「…誰からだ?」
「それが…」
部下に知らされた名前を聞いて、オルタンスは目を細めた。