The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
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Ⅰ (27/39)
「箱庭帝国最大の非合法組織、『シュレディンガーの猫』のスパイが、国内の騎士官学校に潜り込んでいるという情報を、アイズが掴んでね」
「…」
騎士官学校。
その言葉を聞いて、俺はすっと目を細めた。
ルルシーも、身を硬くしたのが分かった。
「…その情報は、確定ですか」
「何処かの騎士官学校に潜入しているのは確定よ。でも、それが何処かは不確定。おおよその検討はついているけど」
「…」
「でも、アイズが掴んだ情報よ。それだけでも信用に足ると思わない?」
…めちゃくちゃ思います。
答えるまでもない。アイズレンシアの手腕は、俺達もよく知るところだ。
彼が掴んだ情報なのなら、それは真実だろう。
「つまり…我々が以前やったことを、『シュレディンガーの猫』もやっている訳ですか」
と、ルルシー。
思い出して頂きたい。ルルシーは始め、スパイ活動の一環として、ルキハという名で帝国騎士官学校、及び帝国騎士団に潜入した。
…あのときのルルシーとの出会いを思い出すと、いとおしさが溢れて今でも涎が出るけれど。
ともあれ、『シュレディンガーの猫』もかつてのルルシーと同じことをしているようだ。
騎士官学校を経て、あわよくばそのまま、帝国騎士団にも潜入したいところなんだろうな。
何処の非合法組織もやることは一緒だなぁ、と思い知らされる。
しかしさすがは田舎国の放浪マフィア。うちに尻尾を掴まれてるようじゃ、まだまだだな。
まぁ、それだけアイズレンシアの能力が優れているということなのだろうが。
「あなた達のどちらかに、そのスパイが潜入していると思われる騎士官学校に入学して、調査して欲しいの。あなた達は元帝国騎士だし、騎士官学校についてもよく知っているでしょうから」
まぁ…『青薔薇連合会』の中では、一番の適任だろうなぁ。
俺もルルシーも、剣の扱いにはそれなりに精通してるし。
もしそのスパイと仮に殺し合いになったとしても、応戦出来るだけの実力もある。
アリューシャも強いけど頭がちょっとアレだし、シュノさんは女の子だから、アシュトーリアさんが手元から離したがらないだろうし。
アイズレンシアの強みは、潜入捜査ではなく情報戦だし。
残されたのは、俺とルルシー。だからどちらかにお願いしたい、とアシュトーリアさんは言っているのだろう。
「分かりました。では、俺がやります」
ルルシーは、自ら申し出た。
え。ちょっと。
「ルルシーがやるのね。分かったわ。またあなたと長い間会えないのは寂しいけど…」
「必ずや、『シュレディンガーの猫』のスパイを炙り出して見せます。お任せください」
「えぇ。お願いね、ルルシー」
「ちょ、ちょっとちょっと待ってください!」
何で、俺を抜きにして話がまとまってる?
それはおかしい。
「…何だよ、ルレイア」
「何でルルシーがやると決定してんですかっ?」
これはあれだろう。二人で応相談じゃないのか?
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