The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
朝、学校にやって来たエルスキーは、酷い有り様になっていた。

「おは…おはよ…げほっ」

「ちょっと!どうしたのエルスキー?」

すっとんきょうな声をあげるミューリアの方を振り向くと、マスクをつけ、厚着をしたエルスキーの姿があった。

「ごめ…。今朝から喉が…げほっ、えほっ」

咳き込むな。感染るだろうが。

「風邪?無理せず休めば良いのに…」

「でも…討論会…」

がらがら声で、エルスキーはそう言った。

だが、ミューリアがそんなことを許すはずがない。

「駄目よ。そんな声で発表なんて出来る訳ないじゃない」

「でも…じゃあ、誰が…」

さすがに、ティモニー一人にやらせる訳にはいかないからな。

…嫌な流れだ。

「アシベル、行ける?」

「無理!無理無理無理!絶対噛む!」

「質疑応答だけでも」

「無理ぃ~!俺には荷が重いって!」

めちゃくちゃイラッとするな、この男。

「私が出ても良いけど…私、討論会の運営委員引き受けちゃったから…時間的に厳しいのよね」

と、ミューリア。

…つまり、この流れだと。

「…ルナニア、頼める?」

そうなると思いました。

お前ら一回、爆発しろよ。

「えぇ、俺で良ければ…」

内心殴りたいほどイライラしているが、そんな態度はおくびにも出さずに、笑顔で引き受けた。

何の為のカラオケ対決だよ。

俺だって、断れるものなら断りたい。

でも、それはルナニアのやることではないのだ。

糞が。

「ごめんな…。ルナニア…」

「仕方ないですよ。気にしないでください」

謝るエルスキーの後頭部を、軽く蹴っ飛ばしてやりたかったが。

その衝動を必死に抑え、俺は笑顔でそう答えた。
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