The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
討論会が始まった。

討論会では、まず各グループの発表役が皆の前でレポートを発表し、

その発表の後で、質疑応答等を交えながら、自由に討論する。

最初のグループが発表している間、発表役の俺とティモニーは、舞台袖で自分達の発表順を待たされていた。

「はぁ…」

ティモニーは酷く緊張しているらしく、さっきからしきりに手をもそもそ動かしている。

一体、何をそんなに緊張することがあるのか。

俺が発表役をやりたくなかったのは、何も、発表そのものが嫌だったからではない。

ただ単に、レポートが気に入らなかっただけだ。

自分の口から、帝国騎士団を賛美するようなことを言いたくなかった。

別に、人前で発表することなんて何でもない。

こればかりは、経験の差だな。

「大丈夫ですか?ティモニー」

「君は緊張してないの?」

「あはは…してます…」

本当は、全く緊張なんてしてないけど。

緊張してることにしておかないといけない。ルナニアとしては。

「僕らの発表如何によって、帝国騎士団の名誉を傷つけることになるんだ。緊張もするよ」

「…ですよね」

同意しながら、内心、こいつは馬鹿なんじゃないかと思っていた。

奴らの名誉なんて、缶ジュースほどの値打ちにもならない。

唾でも吐き捨ててやれば良いのだ。

俺に言わせれば、こんな討論会、全くの茶番。

どのグループも、いかに帝国騎士団が素晴らしく、また、いかに王家が素晴らしいかを語るばかりだった。

勿論、帝国騎士団や王家を貶すようなレポートは討論会に出させてもらえないから、そういうレポートばかりになるのは仕方ないのだが。

下らない。全くもって下らない。

お笑いじゃないか。

あの組織に、正義だの名誉だの、そんなものがあるのなら教えて欲しい。

「…馬鹿らしい」

誰にも聞こえないように、俺はそう吐き捨てた。
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