The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
幼い頃の私は…何処にでもいる、夢見がちな少女だった。

私の場合、アイズレンシアやアリューシャのような、食うや食わずの過酷な環境ではなかった。

あまり良い環境とは言えなかったが、食べ物に困ることはなかったし、着るものも寝るところもちゃんとあった。

アイズ達の生まれに比べたら、私は随分と恵まれている。

けれどもあの頃、私は自分が恵まれているなんて思ったことがなかった。

むしろ、自分は不幸な女の子だと思っていたくらいだ。

というのも、お母さんが、あんまり優しくなかったから。

私のお母さん。今は何処にいるのか、何をしているのか…そもそも生きているのかさえ、知らないけれど。

知りたいとも思わないけれど。

私のお母さんは、私を愛してはくれなかった。

私のことを、疎ましく感じていたようだった。

それに、私が大きくなるにつれて、家に帰ってくることも少なくなった。

殴られたり、暴力を振られることはなかった。でも…昔から、よく嫌なことを言われた。

お前はインラン女だ、とか。アバズレ女だ、とか。

幼い頃は、私はその汚ならしい言葉の意味が分かっていなかった。

でも、罵られているのだということは分かっていたから、お母さんにそんなことを言われて、私はとても悲しかった。

今なら、その言葉の意味も分かる。

どうやらお母さんは、幼い私を「女」として見ていたようだ。

何故あんなことを言ったのか。本人に聞いてみたことがないからはっきりとは分からないけど…。恐らくは、私が幼稚園の頃…割と、男の子に好かれていたからじゃないかと思う。

何故だかは分からないけど、私は幼稚園の頃や、小学校低学年の頃、男の子によくモテた。

何が良かったのだろう。小さい頃は多分、愛想が良かったんじゃないかと思う。

近所に住む同い年の男の子が、子供の冗談で「大きくなったら僕のお嫁さんになって欲しい」と言っていたのを聞いて、お母さんは私のことを「インラン女」とみなしたのだ。

当時は、何でお母さんにあんなに嫌われていたのか分からなかった。

でも今なら分かる。お母さんは…娘である私を、女として見ていたのだ。そして…妬ましく思っていたのだ。

自分の娘に対して、どうしてそんな目で見ていたのかは、今でも分からないけど…。
< 316 / 561 >

この作品をシェア

pagetop