The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
幼稚園に入るまでは、そんな親でも、何の違和感もなかった。

いや…もしかしたら漠然と、おかしいな、とは思っていたのかもしれない。

だって、私には兄がいたから。

腹違いの兄。私の不幸の元凶となった兄。

お母さんは、私のことはちっとも可愛がってはくれないのに…兄に対しては、溺愛と言えるほどに愛していた。

同じ腹から産まれてきたはずなのに、この待遇の違いは何なのだろう。

幼いながらに、ぼんやりと…そう考えていたことを覚えている。

誰もその答えを教えてくれないから、仕方なく私は、性別の違いだろうと納得した。

きっと男の子というのは、何か事情があって、女の子より大事にされなければならないのだ、と。

そう。私は幼い頃、男の子というものは世間の一般常識として大事にされるのが当たり前で。

女の子はそうではない。男の子ほど大事にされない。そんな時代錯誤な考え方を、知らず知らずに持つようになっていた。

しかし、その考え方に疑念が混じるようになったのは、幼稚園に入ってからだった。

幼稚園には、他の女の子達がいた。

他の女の子達は、私と同じようにお母さんに疎まれたりはしていなかった。

同い年の女の子達が、お母さんと楽しそうに話したり、遊んだりしているところを目の当たりにした。

毎日お母さんに髪を結んでもらったり、可愛い洋服を着せてもらったり、手作りのキャラクター弁当を作ってもらったりしていた。

そのとき、私に激震が走ったのだ。

あの子達もお母さんに疎まれているんだとばかり思ってたのに、全然そんなことないじゃん!って。

それを見て私は初めて、もしかして、うちはよその家とは違うんだろうか?と思い始めた。

女の子が疎まれてるんじゃなくて、私がお母さんに疎まれているだけなのか?と。

お母さん本人に尋ねてみたこともある。お母さんは私のこと嫌いなの?とはっきり聞いた。

するとお母さんは、好きか嫌いかでは答えず、

あんたは可愛くない、と言った。

つまり…好きじゃない、ということなのだろうけど。

私がどれだけ悲しくなったか。

アイズやアリューシャ達の苦しみと比べたら、母親に可愛くないと言われたくらいで何だ、と思われるかもしれないけれど。

それでも、私は悲しかった。

そして、我が家はよその子の、普通の家とは違うんだと分かって、ますます悲しくなった。

思えば、最初から我が家は、元々普通とは違っていた。
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