The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
自分はあんまり可愛がられないのに、兄だけはたっぷりと愛情を注がれているのだから、それだけでも兄を嫌うのは当然のことだが。

それだけじゃなかった。兄は…あの大嫌いな兄は、私を女として見ていた。

お母さんが私をそういう目で見ていたから、兄もまた、私を女として見ていたのだ。

私がまだ幼児だった頃から、兄はよく、べたべたと私の身体を触ってきた。

また、私に自分の身体を触るように強要した。

思い出しただけでもおぞましくて、吐き気がする。

幼い頃の私は、男女の身体のことなんて、全く分かってはいなかった。

でも、本能的に、自分が悪いことをしている気がしていた。

だから嫌がった。何度もやめてと言った。気持ち悪かった。

けれども私が拒否すると、兄は怒った。私を殴り、髪を引っ張った。

更に、わざとお皿を割ったり、部屋を散らかしたりして、お母さんが戻ってきたときに、それを私のせいにした。

お母さんは兄を溺愛していたから、私がいくら身の潔白を訴えても、聞き入れてくれなかった。

罰として、私はお母さんに平手打ちされたり、食事を抜かれたりした。

こうなると、もう兄の好きにさせるしかなかった。

勿論、お母さんに訴えたこともある。お兄ちゃんに身体を触られて気持ち悪い、と。

けれどもこれは逆効果だった。お母さんは目を剥いて私を叱った。

お前は汚い、インラン女だ、と。

その歳で男を誘ってる、売春婦、と。

言葉の意味するところは、その頃にはまだ分からなかった。

でも、私が悪いと思われていることはすぐに分かった。

お母さんに訴えても無駄だった。

兄はお母さんが自分の味方だと思っていたから、悪びれることもなかった。

この頃から、私は男いう性に対して、嫌悪感を抱くようになっていった。

かろうじて、お母さんが家にいるときには、そういうことをされなかったのが救いだった。

兄は分かっていたのだ。自分のやってることが良くないことなんだと。

それを私に強要するのだから、何と汚い男だろう。
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