The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
その夜、私はいつものように大通りに出て、相手をしてくれそうな男を探した。

私が選ぶのは、ちゃんとお金を払ってくれそうな、身なりの良い男性だった。

また、乱暴にしそうな人とそうでない人も、大体見分けられるようになっていた。

だから今夜も私は、そんな人を選んだ。

随分若いけど、身なりが良くて、大人しそうに見えた。

まぁ、そんな人でもベッドの上では全く正反対ということもあるのだけど。

少なくとも、着ているものを見る限り、若いなりにそれなりに金持ちのようだから、あながち外れでもないだろう。

この人なら大丈夫そうだと踏んだ私は、その男に声をかけた。

「こんばんは」

作り物の微笑みを顔に貼り付けて、わざとワンピースの胸元を少しはだけさせ、顔には年齢と不釣り合いなほどの濃い化粧と、安い香水のけばけばしい香りを漂わせながら。

「良かったら、私と遊びませんか?」

「…」

その人は、私を見るなり、驚いたような顔をした。

そして、憐れっぽい眼差しで、じっ…と私を見つめた。

その瞬間に、あ、駄目だな、と思った。

気のある男だったら、私がこうして詰め寄ったら、品定めでもするかのような汚い目で私を見るが。

その人は、私を憐れんだから。

こういう人は、応じてはくれないのだ。

でも、それはそれで構わない。

同情をするタイプの男は、可哀想な捨て猫を拾うかのように、自分の家に連れていって、一晩か二晩ほど自宅に泊めてくれたり。あるいは夕食をご馳走してくれたりするからだ。

やらないでタダ飯食べさせてくれるなら、儲けものだ。

とはいえ、この人はたっぷりとチップを弾んでくれそうな身なりをしているので、ベッドまで連れ込んだ方が得かもしれない。

と、私はあくまで男のことを、便利な財布のようにしか考えていなかった。

「…君、一人?こんなところで何してるの」

「私と遊んでくれないんですか?」

「悪いけど、そういう趣味はなくてね」

それは残念だ。搾り取れるかと思ったのに。

「君…家はないの?家族は?」

「…いません」

正確には、母がまだ生きてると思うけど。

家を出てから一度も会っていないのだから、いないも同然だ。

向こうだって私のことなんて、とっくに忘れて久しいだろう。

「そう…。行くところはあるの?」

「…ない…です」

この人の家に連れていってくれる流れだな、と思い。

私はいかにもしおらしい少女を演じて見せた。

我ながらしたたかだったものだ。

でも、今までの男は皆これで、ころっと騙された。

男なんて単純で、何も考えていないのだから、ばれるはずがないと思っていた。

目の前の男が、私の魂胆を即座に見抜いているなんて…思いもよらなかった。

「…分かった。一緒においでよ。君に会わせたい人がいるんだ」

「?分かりました」

うちに来い、と言われることは予想していたが。

会わせたい人というのは何だ?

まぁ、泊めてくれるみたいだから、どうでも良いや。

いざとなったら殺せば良いんだし。

そう思って、私は軽い気持ちでついていった。
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