The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
私はてっきり、その男の家に連れていかれるんだと思っていたが。

連れていかれたのは、何故か帝都の中でも群を抜いて高い、高層ビルだった。

後で知ったことだが、ここが『青薔薇連合会』の本部ビルだった。

もしかして、変なことに使われるのだろうか…と、そのときになって初めて、不安が募った。

私はこの男を殺して、すぐに帰った方が良いんじゃないか?

そんなことを考えた、そのとき。

「別に君を傷つけたりはしないから、安心してついてくると良い」

私の考えを先読みしたかのように、その人はそう言った。

「その物騒な刃物と…あとスタンガンも、しまっておいてね。それを出されると、こちらも動かなきゃならない」

「!」

私は一度として、この男の前で武器を見せたりはしなかった。

それなのに、この人は…私が見せるまでもなく、私の殺意に気づいていた。

一体、何者なんだろう?

私は、とんでもなく危険な男に声をかけてしまったのではないだろうか。

「…私を、殺すつもりなの?」

「いや、殺さない。傷つけるつもりもないから安心して」

不安になって尋ねると、彼はそう答えた。

何を考えているのかは分からない。でも…下手に動くより、従っていた方が安全だということは分かった。

私は黙って、彼についていった。

大きなビルの中に入ったところで、今度はその人に会った。

「うぉっ!アイ公!その子誰?アイ公お持ち帰りしたの?」

「してないよ、失敬な。アシュトーリアさんはいる?」

「いると思うよ。何?その子をスカウトしたの?」

「まぁね」

スカウト…?

「アイ公はあれだな。スカウトマンだな!」

「別に良いでしょ。それじゃ。彼女に紹介してくるから」

「あいよー。じゃあまた後でね」

私はその二人の男の会話を理解出来ていなかった。

スカウトって…?彼女に紹介、って何?

「私、何をさせられるの?」

「大丈夫。君はもう誰にも傷つけられないから」

「…」

大丈夫って…。一体、何が大丈夫だと言うのか。

男の言うことなんて、全く信用出来ない。

男はいつだって口先ばかりだ。嘘をついて女を騙す。

私はこの男も、他の男と同じなのだと思って疑っていなかった。

私を安心させるようなことばかりを言って、裏切ろうとしているのだと。

なんとかして逃げたい、そう思っていたが…。でも、その人には一切の隙がなかった。

下手に動くと、本当に殺されるかもしれなかった。

死にたくはなかった。

だから、ついていった。

一体、誰に会わせられるんだろう…?

困惑のままに、私は彼について、一緒にエレベーターに乗り込んだ。

「私、誰に会うの?ここは何処なの?」

不安に駆られて尋ねると、彼は答えてくれた。

「ここは『青薔薇連合会』の本部。君がこれから会うのは、ここの首領だ」

「…!?」

これには、私も驚愕を隠せなかった。
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