The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「さぁ、ケーキをどうぞ。どれが良いかしら。チョコ?チーズ?」

「…」

「女の子だもの。ケーキは別腹よねぇ。三つくらいは軽く食べてしまうのだけど…。アイズに怒られるのよ。それは食べ過ぎです、って。ちょっとくらい良いと思わない?」

「…は、はい…」

彼女の目の前に座らされ、私はすっかり縮み上がってしまっていた。

「まぁ、そんなに緊張しないで。私はあなたと仲良くしようとしているのよ」

「な、仲良く…って…」

「うちはどうしても、女の子が少なくてね…。私、娘って一人くらい欲しかったの」

「…」

…娘って。

一体、どういう意味なんだ。

私がその娘の代わりだと?何で私が…?

「…あなた、色々と…苦労してきたのね」

「え?」

「見たら分かるわ。きっとたくさん…怖い目に遭ったり、辛いことを経験したんでしょう」

「…それは…」

私の頭の中に、今までの人生が走馬灯のように浮かんでいった。

…確かに、楽であったことは一度もなかったような気がする。

「こんなに幼い女の子が…。大変だったわね」

「…」

「もう大丈夫よ。ここに来たからには。私が守ってあげるから」

そんなことを言われたのは初めてで、私は何て言ったら良いのか分からなかった。

彼女の言葉には、思わず甘えてしまいたくなる包容力があった。

「一体、どんな辛い目に遭ったの?私にそっと教えてちょうだい。誰にも言わないから」

「わ、私は…」

「大丈夫よ。何をぶつけてくれても…。全部受け止めてあげるわ」

目の前にいるのは、男ではない。

私と同じ、女だ。

私が抱えてきたものを理解するには、私と同じ女性でなければならなかった。

気がつけば、私は全てを話してしまっていた。

彼女の包み込むような優しい目に、絆されてしまったと言えばそうなのだろう。

彼女なら、私の苦しみを理解してくれる。

そう思える人に出会えたのは、初めてだった。
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