The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
最初に彼のことを聞いたのは、ルルシーが帝国騎士団にスパイとして潜入していたときだった。

スパイであることがばれそうになったルルシーは、その人の手引きで逃がしてもらえたのだとか。

ルルシーが無事であったことを喜びながら、私はルルシーの友達であるという彼について、随分と物好きな人間がいたものだ、と思った。

ルルシーがスパイであることを告発したら、それなりの手柄を立てられただろうに。

そのチャンスを自らフイにして、しかも危険に身を晒してまで、ルルシーを助けるなんて。

私には、男同士の友情なんてものは分からない。

男なんて、所詮欲望の塊。

ましてや帝国騎士団の隊長なんて、出世欲と自己顕示欲の権化だと思っていた。

だから、彼がルルシーを助けたのが、ルルシーへの純粋な信頼故なのだということも分かっていなかった。

帰ってきたルルシーが、随分と彼のことを信用しているようだったから、変なのに引っ掛かって騙されてるんじゃないかな、なんて勘繰っていたくらいだ。

そしてしばらくの間、私は彼のことなんて頭の片隅にもなかった。

次に彼のことをまた聞いたのは、彼が帝国騎士団に裏切られたとき。

ルルシーが血相を変えて彼のことを助けに行ったと聞いた。

その後、彼は入院し、ルルシーを始め、アイズやアリューシャも、お見舞いに通っていたようだった。

特にルルシーは、忙しいはずなのに、ほとんど毎日のように通っていた。

しかしあの頃の私は、そんな風に献身的なルルシーを、何処か冷めた目で見ていた。

彼のことをまだ、ルルシーを騙している胡散臭い男だと思っていたのだ。

元貴族、元帝国騎士というだけで、私は彼を軽蔑していた。

別にルルシー達が誰と付き合おうと勝手だ。別に私には何の関係もないのだから。

しかし、その後…私にとっても関係のある人になった。

というのも、彼が『青薔薇連合会』に加入すると聞かされたからだ。

これには、さすがの私も驚いた。

危機感を覚えた私は、アシュトーリアさんに直談判しに行った。
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