The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「仕方ない。ミューリアやティモニーの言う通りだ。真面目に稽古しようぜ。落第して、放課後補習なんて嫌だからな」

善人面のエルスキーがそう言って、立ち上がった。

稽古場行く気満々かよ。糞。

今日はこのまま帰りたかったのに。

なんとか言い訳して帰る口実はないものか…と考えていると。

「ルナニア、ちょっと」

思わぬ助け船があった。

ハバナであった。

珍しい。彼女の方から俺に話しかけてくるとは。

「はい、何ですか?」

「これから一緒にデートしましょう」

色気も糞もない誘い方だなぁ。

それなのにエルスキーやアシベルは、おぉ、と顔色を変えていた。

あのクールなハバナが自分から彼氏をデートに誘うなんて、とでも思っているのだろう。

まぁ、丁度良かった。これで口実が出来た。

「良いですよ。行きましょう」

鞄を持って立ち上がり、エルスキー達に振り返った。

「そんな訳なので、俺、帰ります」

「おぉ、仲良くな~二人共」

「良いなぁ放課後デート!羨ましい!」

こういうとき、恋人の設定って便利だよな。

二人きりで何処かに出掛けても、全く怪しまれない。

しかしミューリアだけは、少し不満げだった。

「良いの?二人共…稽古しなくても。私達これから稽古場に行くから…良かったらハバナも」

「悪いけど、今日は遠慮しておくわ」

ハバナのこのつれない態度。

この女は全く以て、スパイに向いていない。

「それじゃ、行きましょうルナニア」

「えぇ」

俺達はまるで恋人同士のように隣り合って、二人で教室をでた。

背中に、ミューリアの恨めしげな視線を感じながら。
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