The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「知ってたんだろう?ルレイアがいじめられていたことを。本人が話したんだから」

「あぁ…。入学してしばらくした後に、相談された」

よく覚えてるじゃないか。

「なら、何で助けてやらなかった」

ルシェは、酷く息苦しそうな顔で、呻くようにこう言った。

「…あのときは…それほどに追い詰められているとは思わなかったんだ」

「…」

「私自身、学生時代は…名家の出身ということもあって、多少のやっかみや、扱きの類はあった。だから、ルシファーの場合も…私が受けたものと同じ程度だと思い込んでいた」

「…その、多少のやっかみや扱きだったら、放置しておくってのも俺には信じられないけどな」

多少なら放っておいても良いってか。

俺だったら、ルレイアが少しでも傷つけられるようなことがあったら…黙っちゃいないが。

ルレイアもそうだろう。俺に少しでも何かあれば、大人しくはしていないはずだ。

「つまり…ルレイアが弱音を吐くのを、大袈裟だと思って聞いてた訳だな?『多少』のイビりくらいで騒いでるって」

「…そうだ」

「…」

…ルレイアじゃないが…ルシェに腹が立つ気持ちも分かる。

ルシェはあの現場を見ていない。ルレイアがよってたかって、ルームメイトにリンチされてるところを。

あれを見ればルレイアが何をされていたのか、一目瞭然だっただろうが…。

でも、自分の目で見ていないんだから、お前の言うことは信用しない、なんて。

それは通用しない。ルレイアは気づいて欲しかったはずだ。誰より信頼していたであろう姉に。

自分がどんな目に遭っているのか、察して欲しかったはずだ。

自分がこんなに訴えているんだから、分かってくれるはずだと。

そう思っていたに違いないのだ。

それなのに。

「…知らなかった。そう言って言い訳したいんだろうが…」

残念ながら、それは通用しない。

「…あんたが俺より先にルレイアを助けていたとしたら、ルレイアはマフィアには入らなかったと思うぞ」

あのとき、俺以外の誰もルレイアを助けなかったから、ルレイアは俺と出会った。

そして、俺がルレイアを『青薔薇連合会』に誘った。

まぁ、俺がルレイアと出会っていなかったら…そのときはお互い、行き着く先は破滅の道だったろうな。

俺は帝国騎士団にスパイであることがばれて、拷問されて処刑されていただろうし。

ルレイアはルレイアで、帝国騎士団に裏切られた時点で自殺していただろうから。

だからこれで良かったんだ。ルシェがあのときルレイアを助けなかったのは、俺にとっては幸いだった。

でも…そのぶんルレイアは、俺が転校するその日まで、長く辛いいじめに遭った。

…ルシェが、助けてやらなかったから。

ルレイアがルシェを恨む気持ちも、分かるというものだ。





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