The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
ルレイアを信じてやらなかった、ルシェが悪い。

それは分かっていた。

しかし、どうにも…俺はルシェが気の毒だった。

同情とまでは行かないが…憐れではあった。

形はどうあれ、ルレイアを大事に思っているその気持ちは、俺と同じだからだろう。

「…ルルシー、と言ったな」

「あぁ」

ルシェは暗い顔を上げて、俺を見た。

「ルシファーのことはきっぱり諦めようと、何度も思った。あの子はもう私の手を離れた。私が手を離した…。だから、あの子が私のもとに帰ってきてくれることはないと分かっている」

そうだろうな。

「でも、私はあの子を捨てきれない。信じてはやれなかったけど…。でも、あの子を愛してるんだ」

「そうか」

ルレイアなら、この言葉を信じないだろうな。

愛してるなら何で助けてくれなかったのだと言うだろう。

確かにその通りではある。でも…ルレイアを大事に思う者同士、ルシェの気持ちも分かる。

「だから…どうか、私の代わりに…あの子の傍にいてやってくれ。私はもう出来ないから…。ルシファーはお前のことを信じている。だからどうかお前は、ルシファーを裏切らないで…最後まで信じてやってくれ」

「…それを、あんたが言うのか」

自分がやらなかったことじゃないか。

「そうだ。私が言う。私が…出来なかったことだから」

「…俺は、あんたとは違う」

俺は何があっても、ルレイアを信じる。

最後まで。最後の瞬間まで俺は、ルレイアを裏切らない。

彼が何者になろうと、どれほど闇に堕ちようと。

俺だけは、絶対にルレイアの傍にいる。

「そんなことは、あんたに頼まれるまでもない。俺はルレイアを信じる。誰よりも…ルレイアを大事に思ってるから」

きっぱりとそう答えると、ルシェは瞳に涙を滲ませながら、微笑んだ。

「…ありがとう」

ルシェのことが、酷く憐れだった。

彼女もまた、ルレイアを愛していたはずなのに。

最後の最後で、ルシェはルレイアを信じられなかった。

それが、ルシェの過ちだったのだ。

そしてこの過ちが…姉弟の繋がりを、完全に断ち切ってしまったのだ。

…ルシェ。

あんたは何で、ルレイアを信じてやれなかったんだ…。
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