The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
その日の放課後。

「ルナニア。これから稽古場行こうぜ」

と、エルスキーが誘ってきた。

全く。厄介な時期だ。剣術の強化月間という奴は。

いつもなら、断る理由はないのだが。

「済みません。今日はパスです」

「えぇ~。何で?昨日も来なかったじゃん」

俺が拒否すると、アシベルが不満げな声をあげた。

「最近ちょっと忙しくて…」

「忙しいって、何が?試験近いのに他に優先することがあるの?」

しつこいな、こいつ。

普通理由聞くまでもなく事情を察して、そうなんだじゃあ仕方ないね、と言うところだろう。

しかも、今日は。

「ルナニアあんた、真面目に稽古しないと不味いわよ。今回試験監督を務める先生、特に辛口ってことで評判らしいから」

ミューリアまでもが、アシベルに加勢して俺を責めてきた。

ふん、馬鹿馬鹿しい。どんなに辛口な教官だろうが、俺の敵じゃない。

だがまぁ、試験の心配なんてする必要はないのだ。

そもそも俺は、その試験を受ける予定はないから。

「いや、分かってるんですけど…どうしても…」

もう、上手い言い訳を取り繕う必要もない。

適当になぁなぁにしておけば良いのだ。

「そうか。じゃあ、仕方ないな。落第すんなよ」

俺が言葉を濁していると、エルスキーが助け船を出してくれた。

ナイスフォローだ。空気の読める男だな。

「えぇ。それじゃ」

俺は笑顔で挨拶して、鞄を掴んで教室を出た。

そんな俺の背中を見つめながら、エルスキー達は本人がいないのを良いことにこんな話をしていた。

「何処行ってんだろうな?ルナニア…」

「ハバナさんもすぐ帰っちゃったみたいだから、デートかも」

「試験が近いのにデートなんてする?全く…」

ミューリアは心底呆れていた。

下衆の勘繰りも良いところだが、実はアシベルのこの推理は、あながち外れでもない。

俺とハバナ…カセイは、放課後に集まり、作戦会議をしていたのだから。
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