The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
一体、何の為の作戦会議なのかというと、

そんなことは決まっている。

「…ってな訳なので、当日はお互い二手に分かれて奇襲を行います。確かそちらの指揮官は…誰ですか」

「シトウ・フルフレースだ。総帥との会合で一度会ってるだろう」

会合で…?…あぁ。

「あの腰巾着おばさんですか」

「…そうだ」

顔を背けるな、顔を。

カセイだっておばさんだと思ってるだろう、あの人のこと。

シトウって名前なのか。変な名前揃いだな。箱庭帝国の人間は。

「あの人が指揮官…。疑っちゃいませんが、あの人ちゃんと指揮出来るんですか?」

「問題ない。彼女は実績もある」

「ふーん…」

まぁ、X本人が出てこなかったんだから良しとしよう。

「図らずも双方女性が指揮官になりましたね。うちの指揮官も女性なので」

「そうか」

今回うちで指揮官を務めてくれるのは、シュノさんである。

作戦の詳細は、彼女にもしっかり伝えてある。

かなりの大役ではあるが、彼女なら安心して任せられる。

何故、俺本人が行かないのかと思われるかもしれないが…。

俺は作戦の立案者に徹し、この度は前線指揮をシュノさんに任せることにすると、Xには伝えておいた。

更に、俺は個人的に帝国騎士団への恨みもあるから、彼らとの闘争ともなれば、私怨の為に冷静な判断が出来ないかもしれない。

と、まぁこういう建前である。

ついでにカセイも作戦そのものには参加させてもらえないらしい。

というのも。

「…カセイさんは確か、作戦後もランドエルスに残るんでしたよね」

「あぁ。その予定だ」

作戦の後もカセイはここランドエルスでスパイを続け、いずれは支配下においた帝国騎士団にも入って、内部から帝国騎士団を監視する役割を担うそうで。

お疲れ様ってとこである。

「俺は、この作戦が終わったらランドエルスからは撤退しますけど」

だから、剣術の試験も受けずに済む。

「エルスキー達はびっくりするでしょうねぇ。俺がいきなりいなくなったら。何か聞かれたら…転校したとでも言っといてください」

「事後報告か。先に言っておけば良いだろう」

「あれこれ詮索されるの嫌なんですよ。別れが辛いから敢えて黙ってたってことにしておいてください」

どうせランドエルスから撤退したら、エルスキー達との関わりは完全に断つのだから。

まぁ、こうしてカセイに託しても無駄なのだが。

彼女もまた、この作戦が終わったら…ランドエルスにはいられまい。

「なら、作戦の当日が…お前の学生生活最後の日という訳だな」

「そういうことです。人生で二度も三度もやるものじゃないですね」

この一件が終わったら、もう二度と学生にはなりたくない。

などと雑談も交えながら、俺は放課後にカセイと作戦を詰めていた。

カセイは真剣そのものだし、俺も真剣な表情で話し合っていた。

が、俺はこの期に及んでも、演技をしていた。

カセイや、Xには悪いが。

帝国騎士団の大規模演習時を狙った、奇襲計画。

作戦名は、「fallen traitors」。

この作戦は、『青薔薇連合会』と『シュレディンガーの猫』が組んで、帝国騎士団を奇襲、後に彼らの全権を掌握する為の計画である。

少なくとも『シュレディンガーの猫』は、そう思っている。

しかし、これは真っ赤な嘘である。

この計画は始めから…『シュレディンガーの猫』をルティス帝国から一掃する為に、俺が考案したものだった。

そしてこの計画が、いよいよ、最終局面を迎えようとしていた。
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