The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「…俺は反対だな」

最初に反対意見を口にしたのは、三番隊のアドルファスだった。

「何故反対する?」

「『猫』が『連合会』の立場に成り代わるなんて、そんなことは不可能だからだ」

あぁ…アドルファスも気づいていたか。

「不可能だと?」

「だって不可能だろ。『青薔薇連合会』は何十年何百年単位で、ルティス帝国の裏社会に根付いていったんだ。組織のトップが倒れたからって、そこに余所者のマフィアがすり替わって、今まで通り上手く行くはずがないだろ」

「…」

アドルファスのこの意見には、さすがのユリギウスやルーシッドも黙った。

「…確かにな。下手をすれば、余計な混乱を招く結果になるかもしれない」

リーヴァも、アドルファスに同意した。

更に。

「…貴殿らに、『青薔薇連合会』の代わりが務まるとは思えない」

隊長会議では沈黙を守ることの多いルシェまでが、そう言った。

「『連合会』よりはましと言うが、どちらにしても変わりはない。今後は大人しくしていると言いながら、手のひらを返す可能性だってある」

「我々は…そんなつもりは」

「口先でなら何とでも言える」

「…」

ハーリアは抗議の声をあげようとしたが、ルシェに一刀両断されていた。

そう。口だけなら…何とでも言えるのだ。

あれだけ狼藉を働いた『シュレディンガーの猫』が、今後は大人しくしますと言っても、どれほど信用出来ることか…。

「…貴殿は弟を失いたくないが為に、『連合会』を庇っているだけではないのか」

五番隊のアストラエアが、ルシェを睨んだ。

しかし、ルシェは怒りもしないし、後ろめたい顔をすることもなかった。

「そういうことではない。それに…あの子は、『シュレディンガーの猫』や帝国騎士団ごときに、殺されるような人間ではない」

「…」

誰一人、鼻で笑い飛ばすことが出来ないのが辛いところだ。

…ルレイア・ティシェリー。

俺の頭の中を占めているのは、紛れもなくあの男のことだった。
< 369 / 561 >

この作品をシェア

pagetop