The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

sideルレイア

ーーーーーー…オルタンスがそんな糞みたいな理由で、『シュレディンガーの猫』の誘いを断ったのだと知っていたら。

俺は、舌打ちの三つ四つくらいは軽くしたのだが。

オルタンスが『猫』の誘いを断ったのを聞いて俺は、まぁ報復が怖かったのだろうな、と判断した。

実際、そういう理由はあった。

そしてオルタンスは正しい判断をしたのだ。

もし。もしも奴らが、二度も俺を裏切ったとしたら。

生まれてこなければ良かったと思うくらい、恐ろしい報復をしてやるところだった。

とはいえ…帝国騎士団が『猫』と組まなかったというのは、俺達にとっても幸いだった。

そんなことをされたら、さすがに痛手じゃ済まなかったからな。

ルルシーの身の安全も脅かされるところだった。

「先に裏切ろうとしたのはそっちじゃないですか…。俺達に良い顔をしながら、背後から撃つつもりだったんでしょう?人のこと言えませんよね」

「…」

カセイは悔しげに唇を噛み締めた。

ばれてないと思ったら、大きな間違いだ。

「残念でしたね、カセイさん。ここはルティス帝国…我々の縄張りです。余所者の泥棒猫が入ってきて良い場所じゃない。自分の国にいられないってんなら…潔く死んでください」

亡命国に、ルティス帝国を選んだのがそもそもの過ち。

そして、俺達に頭を下げながら細々と生きていくならまだしも…帝国騎士団や、『青薔薇連合会』に牙を剥いた。

それが、第二の過ち。

そして、第三の過ちが。

「…俺を信じたことが、間違いだったんですよ」

絶対に、信じてはいけない人間だった。

「カセイ・リーシュエンタール。あなたは何も悪くない。強いて言うなら…敵に回した人間が悪かった」

俺は微笑みを称えて、彼女に言った。

あるいは他の国であれば…彼女達もまた、生き延びる術があったろうに。

恨むなら、己の祖国と、そして自らの運命を恨んでくれ。

「…お前は自分が裏切られた過去を持ちながら、我々を裏切るのか」

「そうなりますね」

「何故そんなことが出来る。裏切られる痛みを知っておきながら、何故…!」

「…ふふ」

自分でも、そう思うよ。

裏切られる痛みや苦しみは、俺もよく知っている。

それなのに何故、俺が彼女達を裏切るのか。

「…カセイさん、俺は堕ちるところまで堕ちたのかもしれません」

二度と裏切られたくないと思っているのに、俺が『シュレディンガーの猫』を裏切ったのは。
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