The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「そこ、退いてくれませんか。彼女を追わないといけないので」

「駄目だ。ルナニア、事情があるなら聞くから…少し冷静になれよ」

「そうよ、ルナニア。彼女が何をしたって言うの?」

…あぁ。イラッとする。

「…あなた達、今まで散々俺をイラつかせてくれましたけど…。最後の最後まで、俺の邪魔をしないと気が済まないようですね」

でも、今は…少なくとも、演技をする必要はない。

もうルナニア・ファーシュバルは終わりだ。

「…退け、ガキ共。邪魔だ」

殺意を込めて威嚇すると、エルスキーもアシベルも、他のクラスメイトも、身体が固まっていた。

そりゃガキ共じゃ、こんな殺意には触れたことはないだろうからな。

足が止まったクラスメイトを無視して、俺はカセイを追って歩き出した。

しかし。

それを阻むように、立ち塞がる者がいた。

「待ちなさい!ルナニア」

「…ミューリアさん」

俺の前に立ちはだかったミューリアは、自分の剣を抜き、俺に向かって構えていた。

ここを通りたければ、私を倒して行きなさい、ってか?

「…良いでしょう。相手してあげますよ」

「何言ってるの。あなた、私に勝てたことなんて一度も…」

「そうですね。俺、あなたにずっと言おうと思ってたんですけど」

最早、ルナニアを取り繕う必要はない。

この女を…生かしておく必要もないが。

だが、特に罪もないクラスメイトに人死にを見せて、トラウマを植え付けるのも気の毒だから。

俺は一歩を踏み出し、自分の剣を一本と、横で呆けていたエルスキーの剣を瞬時に奪い取り、両手に構えた。

そのまま、一瞬にして驚愕に目を見開いたままのミューリアに詰め寄った。

「…あなた、蝿が止まるほど遅いですよ」

次の瞬間には、剣を持ったままのミューリアの左手が、宙を待っていた。

ミューリアは肘の先がなくなった自分の手を見て、呆然としていた。

クラスメイトの何人かが、悲鳴をあげた。

「…元帝国騎士団の四番隊隊長に、勝てる訳ないでしょう」

両手に剣を使うのは非常に久し振りだったが…覚えてるもんだな。

身体に染み付いているのだ。生半可な覚悟で、遊びながらへらへらと騎士官学校に通ってる奴らとは、訳が違う。

悲痛な叫びをあげて崩れ落ちるミューリアを尻目に、俺は剣を床に投げ捨てて、歩き出した。

あぁ、気がせいせいした。

いつかやろうと思っていたんだ。

生意気な女は、大っ嫌いだからな。

「…何で、なの…」

俺の背中に、掠れるようなミューリアの声が届いた。

「何で…。私、ルナニアのこと…ずっと好きだった、のに…」

「…えぇ。知ってますよ」

ミューリアがルナニアを好いていることは、最初から気がついていた。
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