The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
私が生まれたのは、箱庭帝国と呼ばれる小さな国だった。

国土は片側がルティス帝国に面しているが、反対側は海に面していた。

何度もルティス帝国に国土を脅かされた歴史があり、今でも箱庭帝国の民はルティス帝国を嫌っている。

現在はルティス帝国とも比較的平穏で、両国の間で国土を巡る争いは、ここ数百年起きていない。

大国の横の小国という立場で、今までよくルティス帝国に併合されずに生き残れたものだと思うかもしれない。

けれどそれには、事情がある。

箱庭帝国は、無理して奪い取らなければならないような土地ではなかった。

隣国のルティス帝国はあれほど資源が豊かな土地なのに、箱庭帝国の土地は痩せていて、作物もほとんど育たなかった。

災害の被害にも遭いやすく、海に面していると言っても、風が強く荒れた海で、船など出そうものなら、三分の一は港に戻ってこれなかった。

箱庭帝国の造船技術では、無事に海を渡れるような船は造れなかったのだ。

というのも、箱庭帝国は何度もルティス帝国に侵攻されかけた歴史があるからか、酷く封建的な制度が今でも残っていた。

箱庭帝国の政府である憲兵局と、そのトップである大将軍だけが権力を持ち、その他の国民は全員奴隷だった。

職も配偶者も自分では選べなかった。

全てを憲兵局が決め、逆らうと捕まり、拷問を受けた。

あるいは、公開処刑された。

誰も逆らえなかった。

生まれたときに死ぬまでの運命が決まっている。それが箱庭帝国という国だった。
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