The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
私達は、お互いの恋心を自覚していた。

あの国で、恋なんて!

有り得ないことだった。そもそも普通に生活していたら、兄弟以外で男女の出会いの機会はない。

学校も職場も完全に男女別だし、強制結婚がまかり通っているこの国では、男女の恋愛なんてふしだらなこととされていた。

けれど、好きになる人は、自分では選べない。

一緒に生活するうちに、私達はお互いを意識するようになっていた。気がつけば、好きになっていた。

叶うはずのない恋だということは、お互いに分かっていた。

この国では、自由な恋愛は許されない。

どんなに思い合っていようと、憲兵局がこの相手と結婚しろ、と言えばその人と結婚するしかない。

好きでもない相手と結婚なんてしたくなかった。

でも、どうすれば良いのだろう。私達に抵抗なんて出来ない。

男女共に、18歳になったら無作為の相手と掛け合わされる。期限まで、あと三年。

どうすれば、私達は報われるのだろう。

考えれば考えるほど、無謀なことのように思えてならなかった。

きっと、諦めるべきなのだろう。私は心の奥で、そのことを理解していた。

ルーザのことは、良い思い出として私の中に残しておくべきなのだ。

望まない相手と結婚させられるのは、この国に生まれた運命。

文句を言ってどうにかなることではないし、抵抗しても憲兵局に捕まるだけだ。

なら、受け入れるべきだ。

私も…ルーザも、そのことを薄々分かっていたようだった。

仕方ない。私達は、そういう国に生まれたのだから。
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