The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

その事件があってから、ルーザは変わった。

彼はある晩、私の部屋に訪ねてきた。




「…どうしたの？ルーザ…」

「…俺、マフィアに入ったんだ」

何の前置きもなく、ルーザは結果だけを報告した。

私はベッドから飛び起きた。

…今、何て言った？

「父が残した遺品の中に、マフィアの連絡先を見つけた。マフィアのトップに直談判して、下働きとして入れてもらったんだ」

「どうして…！？」

ルーザだって、父親の死に様を見たはずだ。

マフィアに関わった人間が、どんな末路を辿るのか。

それなのに、どうしてルーザまで。

「聞いてくれ、カセイ。俺は今回の件で、よく分かったんだ。この国に正義はない。憲兵局が独裁を続ける限り、あんな悲劇は当たり前のように繰り返される…」

ルーザの言ったことを、私は痛いほどよく理解出来た。

その通りだった。私達の身に起きたことは、この国では全く珍しくない。

「何で母さんが自殺しなきゃいけない？母さんは今まで、帝国の為に必死に働いてきたじゃないか。それなのに何で、病気になっただけで母さんが厄介なお荷物みたいに言われなきゃならない？何で死ななきゃならないんだ？」

「ルーザ…」

「父さんが何を悪いことをしたって言うんだ？母さんを助ける為にはああするしかなかった。家族を救おうとしただけだ！父さんが処刑される理由なんてない！」

「待って、ルーザ落ち着いて。声が大きいわ」

もし誰かに聞かれたら、憲兵局に通報されるかもしれない。

「あぁ…ごめん、つい興奮して…。でも…俺の気持ちはさっき言った通りなんだ。この国はおかしい。間違ってる。そんなことは皆分かっているはずなんだ」

「…」

その通りだ。この国はおかしい。

外国のことなんて、情報が遮断されているから、ほとんど知ることは出来ないが。

隣国のルティス帝国では、国民が自由に仕事や配偶者を決めているそうじゃないか。学校だって行きたいところに行ける…。着るものも自由。

それなのに、何でこの国はこうなんだ？

ルーザのお父さんとお母さんは、何で死ななければならなかったんだ？

二人共…何も悪いことなんて、してないのに。