The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
私達が16歳のときに、ルーザは憲兵局に逮捕された。

勿論、マフィアに関わったことが罪状だった。

憲兵局はあの当時から、国内から邪魔なマフィアを追い出そうとしていた。

マフィアの末端構成員であるルーザの逮捕は、マフィアへの牽制と見せしめでもあった。

言い逃れは出来なかった。ルーザは味方を増やす為に、かなり大胆に布教活動をしていたようだ。

彼がそれほど大胆に動いていたのは、間違いなく…18歳の期限に間に合わせたかったからだ。

私は焦らないでと言った。でもルーザは…なんとしても、強制結婚の犠牲になる前に、私を救おうとしてくれたのだ。

でも、結果としてはそれが裏目に出た。

ルーザは正しい。いつも彼は、正しいことしか言っていなかった。

それなのにこの国で彼は、大罪人であった。

マフィアの構成員で、おまけに思想犯だったのだから。

当然判決は死刑だった。

ルーザが公開処刑されたときのことを、私は今も鮮明に覚えている。

彼は数ある処刑法の中でも、最も残酷な方法で殺された。

ルーザの断末魔の叫びが、今でも耳に残っている。

何故、彼が死ななければならなかったのだろう。

何故、彼の両親が死ななければならなかったのだろう。

生まれたのが、この国でなかったら。

私達は、皆幸せに生きられたんじゃないのか?

箱庭帝国に生まれたいなんて、私は一度も望まなかった。

生まれる場所は、自分では選べない。

何で、正しい者が殺されて、間違った者が生きているんだ?

これはおかしい。こんなことがあってはならないのだ。

ルーザが処刑されたその日、私は震える手で、彼らに連絡を取った。

ルーザは常日頃、私に言っていた。

「自分に何かあったら、ここに連絡するように」と。

こうして私は…彼が所属していたマフィア、『シュレディンガーの猫』にコンタクトを取ることになった。

そして、そのときに私は、自分が彼の無念を晴らすことを誓ったのだ。
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