The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
私は『シュレディンガーの猫』の首領に会わせてくれと頼んだ。
最初はお前ごときに総帥と会わせるものかと拒否されたが、しつこく食い下がった。
マフィアに保護を求めるつもりなどなかった。
それでは駄目なのだ。
私があまりにしつこくせがんだからか、少しだけ総帥に会わせてやる、と言われ…彼のもとに連れていかれた。
「私を、『シュレディンガーの猫』に入れてください」
「…」
初めて会ったとき、私の第一声がそれだった。
挨拶も何もない。自分の要求を何より先に述べた。
総帥はさして驚いた様子もなく、私をじっと見つめた。
「無礼な!貴様、この方を誰だと…」
総帥の隣にいた付き人の女性(後に彼女がシトウ・フルフレースであることを知った)が、私を叱咤しようとした。
しかし、総帥がそれを制した。
「女、お前は何者だ?何故ここにいる」
「私は…カセイ・リーシュエンタール。ここの構成員だったルーザ・リーシュエンタールの家族です」
「ルーザ…。そうか。あの男は覚えている。今のお前と同じように、俺に会うなり『猫』に入れろと要求した男だ。憲兵局に捕まって処刑されたと聞いたが」
「…」
私はルーザの無惨な死に様を思い出して、強く唇を噛み締めた。
「家族の復讐をしたい訳か」
「…恋人の復讐です」
ルーザを捕らえ、拷問して殺した憲兵局が許せない。
それを笑いながら見ていた観衆も。
私は彼の無念を晴らす。その為に…マフィアを利用する。
ルーザの言う通りだ。まずは力をつけないと。
その為に私も、マフィアを使うのだ。
「恋人…か。お前は自分がその恋人の二の舞になるかもしれないとは思わないのか?」
「二の舞になっても構いません」
同じように、彼の苦しみを味わって死ぬのなら。
「それは本望というものです」
きっとルーザは、私がマフィアに入って彼の復讐をすることなんて望んではいないだろう。
でも、私は彼の為に復讐をするのではない。
私自身の為に。
私を数々の不幸に遭わせた憲兵局に。
そして、彼の理想を…私が叶える。
変えるのだ。この国を。
私が、ルーザに変わって。
「私は…彼の理想を現実にします」
「…」
「その為に…」
「…マフィアを利用する、か」
総帥は愉快そうに笑った。
一体、何がおかしいのか。私は必死に…。
「良いだろう。我々を利用しろ。代わりに俺も、お前を利用する。お前は俺の情婦になれ」
「総帥!お戯れを。こんな女、弾除けの価値しか…」
「だから情婦にするんだ。役に立たない人間でも、身体は女なんだからそれで良い。この話を受けるか?」
…情婦になれ、だと?
望むところだ。ルーザの為なら、この身の貞操などくれてやる。
「勿論です」
「面白い。契約成立だ」
総帥は手を伸ばし、私の頬にそっと触れた。
ルーザ以外の人間にそんなことをされるのは初めてで、私は思わずぞっとした。
けれど、後悔はしていなかった。
最初はお前ごときに総帥と会わせるものかと拒否されたが、しつこく食い下がった。
マフィアに保護を求めるつもりなどなかった。
それでは駄目なのだ。
私があまりにしつこくせがんだからか、少しだけ総帥に会わせてやる、と言われ…彼のもとに連れていかれた。
「私を、『シュレディンガーの猫』に入れてください」
「…」
初めて会ったとき、私の第一声がそれだった。
挨拶も何もない。自分の要求を何より先に述べた。
総帥はさして驚いた様子もなく、私をじっと見つめた。
「無礼な!貴様、この方を誰だと…」
総帥の隣にいた付き人の女性(後に彼女がシトウ・フルフレースであることを知った)が、私を叱咤しようとした。
しかし、総帥がそれを制した。
「女、お前は何者だ?何故ここにいる」
「私は…カセイ・リーシュエンタール。ここの構成員だったルーザ・リーシュエンタールの家族です」
「ルーザ…。そうか。あの男は覚えている。今のお前と同じように、俺に会うなり『猫』に入れろと要求した男だ。憲兵局に捕まって処刑されたと聞いたが」
「…」
私はルーザの無惨な死に様を思い出して、強く唇を噛み締めた。
「家族の復讐をしたい訳か」
「…恋人の復讐です」
ルーザを捕らえ、拷問して殺した憲兵局が許せない。
それを笑いながら見ていた観衆も。
私は彼の無念を晴らす。その為に…マフィアを利用する。
ルーザの言う通りだ。まずは力をつけないと。
その為に私も、マフィアを使うのだ。
「恋人…か。お前は自分がその恋人の二の舞になるかもしれないとは思わないのか?」
「二の舞になっても構いません」
同じように、彼の苦しみを味わって死ぬのなら。
「それは本望というものです」
きっとルーザは、私がマフィアに入って彼の復讐をすることなんて望んではいないだろう。
でも、私は彼の為に復讐をするのではない。
私自身の為に。
私を数々の不幸に遭わせた憲兵局に。
そして、彼の理想を…私が叶える。
変えるのだ。この国を。
私が、ルーザに変わって。
「私は…彼の理想を現実にします」
「…」
「その為に…」
「…マフィアを利用する、か」
総帥は愉快そうに笑った。
一体、何がおかしいのか。私は必死に…。
「良いだろう。我々を利用しろ。代わりに俺も、お前を利用する。お前は俺の情婦になれ」
「総帥!お戯れを。こんな女、弾除けの価値しか…」
「だから情婦にするんだ。役に立たない人間でも、身体は女なんだからそれで良い。この話を受けるか?」
…情婦になれ、だと?
望むところだ。ルーザの為なら、この身の貞操などくれてやる。
「勿論です」
「面白い。契約成立だ」
総帥は手を伸ばし、私の頬にそっと触れた。
ルーザ以外の人間にそんなことをされるのは初めてで、私は思わずぞっとした。
けれど、後悔はしていなかった。