The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
…しかし。


























「…残念でしたね」




爆弾は、爆発していなかった。

ルレイアは相変わらず、目の前で優雅に微笑んでいた。

「なん…で?」

私は手に握り締めたままの手榴弾を見下ろした。

何で、起爆しない?私は確かに…。

「いやね、午前の身体訓練の授業、『うっかり』忘れ物をして教室に戻ってみたら、『たまたま』あなたの机の中に物騒なものが見えたもので…。『ちょっとした悪戯』で、細工してみました。いやぁこんな形で役に立つとは。お陰で俺、命拾いしましたね」

「…!」

…万事休すだった。どうやったって、この男に傷の一つもつけられない。

次元が違う。

「情熱的に抱きついてくれてありがとうございます。でも…あなたは生かしてあげません」

私はずるり、と崩れ落ちた。

もう…おしまいだ。

どうすることも出来ない。

「私は…ただ…ルーザの、無念を…晴らしたかっただけなのに」

こんな、道半ばで。

こんな化け物に出会ってしまったが為に。

「何で…こんなことに」

「…それは気の毒でしたね。心から同情しますよ」

ルレイアは、優しく微笑んだ。

その笑顔は何処から見ても善人にしか見えなくて。

それがまた、私を恐怖させた。

どうして、そんな笑顔で人を殺せる?

どうやったら、人間はここまで闇に堕ちることが出来るんだ?

「あなたは何も間違ってはいない。悪かったとすれば…俺達の縄張りに入ってきたことですが…。それすらも、あなたの責任ではないですよね。もとを正せば悪いのは…あなたの国ですかね?」

「そうだ。だから…私は、ルーザに代わってあの国を変えようと」

「そうですか。それは残念でしたね」

ルレイアは私の顎に指を当て、少しだけ持ち上げた。

そして悪魔は、天使のような笑顔で言った。

「ようこそ、カセイさん。絶望の世界に」

かちゃ、と無慈悲な拳銃の銃口が、私の胸に当てられた。


























「…そして、さようなら」




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