The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
ーーーーー…そろそろ、走馬灯を見終わっただろうか。

カセイの意識が途切れたのを確認して、俺は拳銃を収めた。

先程アイズレンシアから連絡が来て、もうすぐ『シュレディンガーの猫』の殲滅が完了するとの報告を受けた。

「最後の仕上げ、ってところですね」

楽しそうだから、俺も現場に向かいたいところだが。

それより先に俺は、愛しの白雪姫をキスで復活させなければならないんだよな。

「…うふふ。待っててくださいね、ルルシー」

歩き出そうとして、俺はカセイの死体を振り返った。

…彼女が何を思い、何を考えてマフィアに入ったのか。俺には憶測することしか出来ないが。

この世界には、綺麗な物語だけが溢れている訳じゃない。

たった一つの英雄譚を作り出す為に、一体何人、志半ばで死んでいった者がいるだろう。

たまたま成功した一人が、英雄として祀られているだけだ。

目の前にいるこういう人間達の流した血と、そのドラマが語られることはない。

誰に知られることもなく朽ちて、消えていく。

「…俺には知ったことじゃないですけどね」

英雄になりたい者がいるなら、勝手になってくれ。

俺はどうでも良い。そんなもの、頼まれたってなってやるものか。

闇に堕ちた俺には、全く関係ない話だ。

「…あぁ、ルルシー。今、会いに行きますからね」

カセイの後始末は、後で部下に回収させるとして。

俺は、ルルシーに会う為に走り出した。


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