The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

sideシュノ

ーーーーーー…『シュレディンガーの猫』の総帥が絶命したのを確認し、私はインカムに向かって言った。

「Xは死んだわ。これより掃討戦に入ります」

あとは、残りの雑兵を残すのみ。

『よっしゃ~。今のアリューシャの手柄~♪今日のアリューシャ最高に輝いてる!』

『ちょっと、アリューシャ。輝くのは良いけど、この会話帝国騎士団にも聞こえてるんだからね』

アリューシャの呑気な声に、アイズレンシアが答えた。

今回共同作戦を行うに辺り、『青薔薇連合会』と帝国騎士団はそれぞれ別々に分かれて戦っていた。

元々敵同士の間柄。仲良く背中を預けて戦うなんて不可能だし、普段一緒に訓練もしていないのだから連携も難しい。

その為、始めから戦力を二つに分け、『連合会』は『連合会』、帝国騎士団は帝国騎士団でそれぞれ勝手に戦っていた。

だが、共に戦う以上最低限連携を取れるように、インカムを共有しているのだが。

…今のアリューシャの恥ずかしい台詞、帝国騎士団に聞かれた。

思わず赤面してしまう。確かにあの距離から撃ち抜けるその技術は驚嘆に値するが、この軽口はどうしたものか。

私は頭を軽く振って、雑念を払った。

まだ作戦は終わっていない。

ルレイアに任されたのだから。彼が私に、こんな重要な役を託してくれた。

その期待には、ちゃんと応えてみせる。

それにこの作戦が終わったら、ようやくルレイアが戻ってくるのだ。

ルレイアもルルシーも。そうしたら『青薔薇連合会』は、ようやく全員揃うことになる。

ルレイアに、以前送ってくれた服を見せてあげたい。

また髪を結って欲しい。服も選んで欲しい。

ルルシーの手料理もしばらく食べてないから、楽しみだな。

また楽しい日々が戻ってくる。

この戦いが終わったら。

…待っててね、ルレイア。

私、ちゃんとあなたの期待に応えてみせるから。

私は死んだ『シュレディンガーの猫』の総帥を見下ろした。

…そう。私には思い人がいる。その人の為に、私は戦う。

『シュノ、三階にまだ20人近く残ってるようだ。加勢に行ける?』

インカムから、アイズの声が聞こえてきた。

「分かった。すぐ向かうわ」

素早く返事をして、私は走り出した。
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