The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

sideルルシー

《煙草辞める編》


ーーーーーーー…。


「…最近、ルヴィアさんが疲れてるみたいなんですよ」

彼の相談に乗るようになったのは、部下のその一言がきっかけだった。

「…何かあったのか？」

「さぁ…。分からないんです。本人も何も言わないし…」

「…」

それは…心配だな。

俺はルヴィア・クランチェスカのことを思い出した。

彼は俺より一つ年下の部下であり、若くして、『青薔薇連合会』では幹部の次に高い役職である準幹部という立場だ。

俺の派閥の中では、俺の次に偉い人間ということになる。

仕事は早く、丁寧で、抜かりない。実力も申し分なく、非常に優秀な男だ。

腹心と呼んでも差し支えない彼だが…。そのルヴィアに、一体何が？

「ん？そういえばルヴィアは…最近結婚したんじゃなかったか？」

「そうなんですよ」

俺が帝国騎士団に人質になっている間に。

遅くなったが、結婚祝いを送らなければいけないな。

しかし…それなら、おかしいのではないか？

だって、ルヴィアは新婚なのだろう？今、一番楽しい時期では？

それなのに疲れた様子というのは…一体どうしたことなのか。

「なんだか悩んでるみたいで…。もしかして、結婚生活が上手く行ってないんでしょうか？」

「そうかもしれないな…」

いくら好き合って結婚したとはいえ、他人と一つ屋根の下…だもんな。

恋人期間の間は気にならなかったことでも、結婚してみたら、こんなはずじゃなかった、と思うこともあるのかもしれない。

「結婚すると、パートナーの良かったところは悪くなり、悪かったところは更に悪くなる」、なんて話も聞いたことがある。

「心配だな…」

「はい。良かったら、相談に乗ってあげてもらえませんか。俺は独身ですから、ルヴィアさんの相談には乗りづらくて…。ルルシーさんは新婚ですし、話が合うんじゃないでしょうか」

「…」

…は？

「おま…ちょっと」

「あっ！そろそろ次の任務の時間なので、行きますね。それでは！」

「はっ？ちょっ…どういうことなんだよっ？」

ちゃんと。ちゃんと説明して行ってくれ。

俺が新婚って何？

俺、いつの間に結婚したことになってるの？

俺は誰とも結婚した覚えは…。

「…」

俺の頭の中に、ある人物が浮かんだ。

常日頃俺と結婚するだの何だの言っていて、かつ、組織全体に俺が結婚したという偽情報を広めるだけの影響力を持った人間。

…あの、馬鹿。

「ルレイアぁぁぁぁっ！」

俺は仕事を放り出して、奴のもとに駆け出した。