The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
その翌日。
俺は早速、自分の執務室にルヴィアを呼んだ。
「失礼します、ルルシーさん」
「あぁ、ルヴィア…。悪いな。忙しいのに呼びつけて」
「いえ。これも仕事ですから」
ルヴィアは、わざわざ呼び出されたからには、何か重要な任務を言い渡されるのだろうと緊張した様子だった。
だが、今日はそういう用件ではない。
「そこに座って、楽にしてくれ。飲み物を持ってこさせよう」
「あ、いえ、お構い無く」
「良いんだ。胸襟を開いてゆっくり話し合いたいと思ってな」
昨日部下の一人から、ルヴィアが何やら悩んでいるようだと聞かされ、気になっていたのだ。
彼は真面目で優秀だが、そのぶん自分でも気づかないうちに疲れや悩みを溜め込んでしまうタイプだ。
仕事熱心なのは大変良いことだが、しかし根を詰め過ぎるのも良くない。
準幹部という、人の上に立つ立場の彼は、悩みや相談事があっても、なかなか同僚に打ち明けて…という訳にもいかない。
根が真面目なものだから、人に頼るとか、相談するとか、そういうことが苦手なのだ。
部下の前では毅然とした姿であろうとするあまり、周りに助力を求めることを無意識避けている。
実は俺もあまり人のことは言えないのだが…。しかしルヴィアは優秀な部下だ。優秀であるが故、悩みを抱え込んで欲しくない。
上司である俺の前なら、普段部下の前では見せられない本音を語ってくれるのではないか。そう思ったのだ。
「何の話でしょうか?」
「あぁ…。部下が、最近お前の元気がないようだと相談してきてな」
「…」
ルヴィアははっとしていた。
自分でも、自覚があるようだ。
「…申し訳ありません。任務に支障が出ないよう、細心の注意を払って…」
「あ、いや、そうじゃない。別に説教するつもりはないんだ」
「…と、言いますと?」
「何か悩みがあるなら聞こうと思ってな。…部下には言えないこともあるだろう?」
「…」
ルヴィアは俯いて、黙ってしまった。
思い悩んでいることはあるが、それを俺に言って良いものか…と考えているのだろう。
俺が信用ならないから、と言うよりは…やはり、根が真面目なのだ。
こんなこと相談して、上司である俺を煩わせるのは…と思っているのだろう。
全く、真面目過ぎるのも困りものだな。
「…最近、結婚したんだってな?」
結婚というワードを出すと、彼ははっ、として顔を上げた。
…やはり、そのことだったか。
「新婚生活に、何か悩みがあるのか」
「…えぇ、ちょっとだけ」
そうか。
ルヴィアは謙遜して、ちょっとだけ、と言うが。
この男をこれだけ悩ませるのだ。ちょっとどころではないはずだ。
「俺で良ければ話を聞かせてくれ。月並みなことしか言えないかもしれないが…」
「でも、家庭のことをルルシーさんに相談するなんて…」
「俺じゃ信用ならないか?」
「そんなことは…。…あ、でも、そういえば」
ん?
「ルルシーさんも新婚なんですよね。ルレイアさんと…。だったら通じるものも」
「ない。何処で聞いたのか知らんが、その情報はガセネタだ」
あぁ、もう頭が痛い。折角忘れてたのに。
「え、ガセネタ…?でも、既に組織中誰もが…」
「やめてくれ。その話は嘘なんだ。ルレイアの妄言だ」
「…そうだったんですか…」
「でも、相談には乗るから。新婚ではないが…。聞かせてくれないか」
「…分かりました」
ルヴィアは意を決したように、俺を真っ直ぐ見つめた。
良かった。決心してくれたようだ。
「このままでは、任務に支障が出るかもしれませんし…言います」
「あぁ」
俺は新婚ではない。断じて新婚ではないが。
しかし、結婚したばかりの部下の相談に乗るくらいなら、出来る。
俺は早速、自分の執務室にルヴィアを呼んだ。
「失礼します、ルルシーさん」
「あぁ、ルヴィア…。悪いな。忙しいのに呼びつけて」
「いえ。これも仕事ですから」
ルヴィアは、わざわざ呼び出されたからには、何か重要な任務を言い渡されるのだろうと緊張した様子だった。
だが、今日はそういう用件ではない。
「そこに座って、楽にしてくれ。飲み物を持ってこさせよう」
「あ、いえ、お構い無く」
「良いんだ。胸襟を開いてゆっくり話し合いたいと思ってな」
昨日部下の一人から、ルヴィアが何やら悩んでいるようだと聞かされ、気になっていたのだ。
彼は真面目で優秀だが、そのぶん自分でも気づかないうちに疲れや悩みを溜め込んでしまうタイプだ。
仕事熱心なのは大変良いことだが、しかし根を詰め過ぎるのも良くない。
準幹部という、人の上に立つ立場の彼は、悩みや相談事があっても、なかなか同僚に打ち明けて…という訳にもいかない。
根が真面目なものだから、人に頼るとか、相談するとか、そういうことが苦手なのだ。
部下の前では毅然とした姿であろうとするあまり、周りに助力を求めることを無意識避けている。
実は俺もあまり人のことは言えないのだが…。しかしルヴィアは優秀な部下だ。優秀であるが故、悩みを抱え込んで欲しくない。
上司である俺の前なら、普段部下の前では見せられない本音を語ってくれるのではないか。そう思ったのだ。
「何の話でしょうか?」
「あぁ…。部下が、最近お前の元気がないようだと相談してきてな」
「…」
ルヴィアははっとしていた。
自分でも、自覚があるようだ。
「…申し訳ありません。任務に支障が出ないよう、細心の注意を払って…」
「あ、いや、そうじゃない。別に説教するつもりはないんだ」
「…と、言いますと?」
「何か悩みがあるなら聞こうと思ってな。…部下には言えないこともあるだろう?」
「…」
ルヴィアは俯いて、黙ってしまった。
思い悩んでいることはあるが、それを俺に言って良いものか…と考えているのだろう。
俺が信用ならないから、と言うよりは…やはり、根が真面目なのだ。
こんなこと相談して、上司である俺を煩わせるのは…と思っているのだろう。
全く、真面目過ぎるのも困りものだな。
「…最近、結婚したんだってな?」
結婚というワードを出すと、彼ははっ、として顔を上げた。
…やはり、そのことだったか。
「新婚生活に、何か悩みがあるのか」
「…えぇ、ちょっとだけ」
そうか。
ルヴィアは謙遜して、ちょっとだけ、と言うが。
この男をこれだけ悩ませるのだ。ちょっとどころではないはずだ。
「俺で良ければ話を聞かせてくれ。月並みなことしか言えないかもしれないが…」
「でも、家庭のことをルルシーさんに相談するなんて…」
「俺じゃ信用ならないか?」
「そんなことは…。…あ、でも、そういえば」
ん?
「ルルシーさんも新婚なんですよね。ルレイアさんと…。だったら通じるものも」
「ない。何処で聞いたのか知らんが、その情報はガセネタだ」
あぁ、もう頭が痛い。折角忘れてたのに。
「え、ガセネタ…?でも、既に組織中誰もが…」
「やめてくれ。その話は嘘なんだ。ルレイアの妄言だ」
「…そうだったんですか…」
「でも、相談には乗るから。新婚ではないが…。聞かせてくれないか」
「…分かりました」
ルヴィアは意を決したように、俺を真っ直ぐ見つめた。
良かった。決心してくれたようだ。
「このままでは、任務に支障が出るかもしれませんし…言います」
「あぁ」
俺は新婚ではない。断じて新婚ではないが。
しかし、結婚したばかりの部下の相談に乗るくらいなら、出来る。