The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「ルヴィアさん、お夕飯が出来たので食べましょう」

「ん、あぁ」

今日はもう何処にも行かないからと、自分の部屋で書類仕事に打ち込んでいた俺を、フューニャが呼びに来た。

俺はパソコンをスリープモードにして、席を立った。

「今日の夕飯は自信作なんですよ」

「あ…そうなのか」

「『残さず』『全部』食べてくださいね」

「…?うん…」

何だ?この含みのある言い方は…。

この時点で、俺は危機感を覚えておくべきだったのだ。

まぁ、危機感を覚えていたところで…最早檻の中に入ってしまっていたから、どうしようもなかったのだが。

フューニャの料理はいつも、どれも美味しかったから…。全く疑っていなかった。

食卓について、俺は目を疑った。

まず主菜。梅風味の白身魚甘酢あんかけ。これはセーフ。非常に美味しそう。

次に副菜。自家製もずく酢。これも美味しそう。セーフ。

もう一つ副菜。箸休めの自家製ピクルス。これも勿論セーフ。

そしてサラダ。大量のミント、バジル、セロリ、パクチーのレモンドレッシングがけ。これも…好き嫌いは分かれそうだが、まぁセーフ。

デザートは、カットしたグレープフルーツ、レモン、キウイの盛り合わせに、チョコミントアイス添え。これは…レモン以外はセーフ。

最後にご飯もの。今日はいつもの白ご飯ではなく、混ぜご飯にしてみたらしい。

ただ、混ざってるものが何なのか分からない。

銀杏…?銀杏なのか?でもそれにしては色が…。

「…!」

至近距離で五秒くらい見つめて、ようやく混ざっているものの正体に気がついた。

飲み会のお伴。今日もついさっきお世話になった、ブレ●ケア。

俺の味方であったはずのブレ●ケアが、白米に5対1くらいの割合で混ざっていた。

新メニュー。ブレ●ケアご飯。

これは完全にアウト。

「フューニャ…これは一体何なんだ」

俺は絞り出すような声で、震えながら聞いた。

よく見たら他のメニューも、酸っぱかったり爽やかだったり…見てるだけで口の中に唾が沸いてきそうである。

「あら…。ルヴィアさん、随分爽やかなものがお好きなようですから」

「…?」

「煙草の臭いも消えますし、一石二鳥かと思いまして」

「!!」

き…気づいていたのか。

「身体の中から爽やかになって頂きます。可愛い妻が一生懸命作ったんですもの。ちゃんと残さず…食べてくれますよね?」

にこ、と天使のように…俺にとっては悪魔のように…頬笑むフューニャを前に。

俺は震える手で、箸を取った。
< 427 / 561 >

この作品をシェア

pagetop