The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
出張から、十日と数日。

当初の予定より早くに、俺達の仕事は終わった。

間違いなく、相棒の女性のお陰である。

いや…どちらかというと、その女性の前に「エサ」をぶら下げた、ルレイアさんのお陰なのだが。

とにかく無事に仕事が終わったので、俺達は飛行機の予約を取って、帰国の途に着いた。

飛行機の予約が取れた時点で、メールでフューニャにも連絡を入れた。

しかし相変わらず返信がないので、読んでいるのか読んでいないのか不安である。

不機嫌だろうなぁ~…。帰ったらまず、フューニャのご機嫌取りに全力を注がなければ。

俺はまだそんな仕事が残っているので、帰るのがちょっぴり憂鬱だったのだが。

そんな俺とは対照的に、隣に座っている俺の相方は、鼻唄でも歌いだしそうなくらい上機嫌であった。

「…なんだか…随分と、嬉しそうだな」

声をかけると、彼女は恍惚として言った。

「はい。ルレイア様に此度の報告をしたところ、『合格』とのお返事を頂きましたので…」

「…」

ルレイアさんの、この恐ろしさよ。

フューニャにどうやって許してもらおうかと頭を悩ませている俺とは、天と地ほどの差がある。

「…実は俺、今回の出張で嫁の誕生日すっぽかしてるから…帰ったら埋め合わせをしなきゃならないんだよ」

「そうなんですか」

「どうやったら機嫌を直してくれると思う?」

「私でしたら…一晩ご主人様の『お相手』をさせて頂くだけで、大変な名誉でございますが」

それはお宅だけだと思うんだよな。

ルレイアさんだから出来るんだ。常人には無理。

「とりあえず、アシスファルト土産は一通り買ったんだが…」

「物より気持ちです。愛しい殿方に情熱的に抱かれるだけで、女性は女としての喜びを得ることが出来るのですから。こういうときこそ、言葉や物ではなく身体で愛を表現しては如何でしょうか」

うん。それやったら、最悪殺されると思うんだよな。本当に。

その「ルレイア式男女の仲直り法」は、我が家では…いや、一般家庭では通用しない。

何回も言うが、ルレイアさんだから出来るんだ。

と、言いたくはあったが…。ルレイアさんの「ご褒美」をもらえると、ぽわぽわとハートマークを飛ばしている彼女を前にして、俺の言葉が届くとも思えず。

フューニャ一人に右往左往してる俺では、とてもじゃないがルレイアさんのようにはなれないな…と、改めて感じた。

失礼ながら…あんまり、ああなりたいとも思わないけど…。
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