The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
大きなスーツケースをがらがらと引いて、俺は久々に帰る自宅の前に立ち、生唾を飲み込んだ。

空港から、無事に帰国した旨をルルシーさんに報告したところ。

今日はもう自宅に帰って良いと言われた。

更に、時差ボケもあり、疲れているだろうから明日・明後日は有給を取るようにとの、有り難い言葉ももらった。

さすがにそれは休み過ぎでは、と抗弁したが。

お前は有給余らせ過ぎだから、部下に有給を取らせやすくする為にも、ここいらで使っておけ、と逆にお叱りの言葉を頂いた。

報告は、落ち着いたらひとまずメールで簡単に送ってくれ、詳細は休み明けで良い、と言われて通話を終え。

俺は空港から真っ直ぐ、自宅に帰った。

俺の相方だった女性は、「ご褒美」をもらう為に、嬉々として『青薔薇連合会』本部に戻っていった。

「…ふぅ」

時刻は午後四時。中途半端な時間だが、事前にメール連絡した通りの時間に帰ってきた。

フューニャは在宅だろうか?

帰ってすぐフューニャに言うべきことを、頭の中で再度シミュレーションする。

…よし。行くぞ。

カードキーをかざし、タッチパネルに触れてロックを解除し、俺はおよそ二週間ぶりに自宅の扉を開けた。

「フューニャ…ただいま」

声をかけたものの、フューニャの姿は見えず。

しかし、これは予想済み。

不機嫌に違いないフューニャが、いつもみたいにてこてこ寄ってくるはずがない。

「フューニャ、いるのか?いるなら顔を見せてくれ」

そう言うと、奥の扉が僅かに開き。

ひょこ、と顔を半分くらい出して、こちらをじーっと見つめるフューニャ。

やることがもう…可愛い。

「ただいま、フューニャ。それから、遅れたけど誕生日おめでとう。傍にいてやれなくてごめんな」

「…」

出来るだけ優しく言ったつもりだったのだが。

しかし、フューニャはそんなに甘くなかった。

フューニャは不機嫌そうな顔でつかつかとこちらに歩み寄ってきた。

「あの、フューニャ…」

「どちら様ですか」

えっ。

出張から帰ってきて、フューニャの第一声がそれだった。
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