The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
「あなた誰ですか。人の家に勝手に入らないでください」

「いや…あの…。俺だけど…」

「あなたみたいな知り合いはうちにはいません。『結婚して初めての妻の誕生日をすっぽかして、同僚の女性と仲良く海外旅行に行った、ろくでなしの夫』はいますけどね」

「…それだよ…」

俺がその、ろくでなしの夫だよ。

「突然帰ってきて悪かった。メール読んだか?」

「知りません。勝手に家に入ってこないでください。警察呼びますよ」

「…本当に悪かったよ」

フューニャの頭を撫でようと思って手を伸ばしたが、フューニャはふいっ、と顔を背けた。

あっ、切ない。

「ごめん、フューニャ。この埋め合わせはちゃんとするから…許してくれ」

「…」

「愛してるよ。寂しい思いをさせてごめんな」

「…別に寂しくなんてありません」

「そっか…。でも、俺はフューニャに会えなくて寂しかったよ」

「…」

フューニャはちらっ、と俺の方を見た。

そして、てこてことこちらに寄ってきて、ぽふ、と抱きついた。

良かった。他人の振りはもうやめてくれたようだ。

よしよしと頭を撫でてやると、今度は嫌がらなかった。

「ただいま、フューニャ」

「…お帰りなさい」

フューニャは小さい声でそう言って、いつもの三倍増しくらいでぎゅうう、と抱きついてきた。

「…私は寂しくなんてありません」

「そうか。俺は寂しかったけどな」

「私は寂しくなんてありません…」

何度か繰り返してそう言い、しかし言葉とは裏腹に、しばらくはそのまま抱きついて、離れようとしなかった。

もう、こういうところが本当に可愛くて仕方ない。

帰ってくるべきところに帰ってきた。そんな気がする。
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