The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
しかし。その夜。

飛行機の中であまり眠れなかったのもあって、俺はすぐに眠りについた。

すると。

「…ふぐっ!?」

誰かにむぎゅっ、と鼻を摘ままれて目が覚めた。

驚いて飛び起きると、めちゃくちゃ不機嫌な顔をしたフューニャが立っていた。

「ふ…フューニャ?」

「…」

寝てただけなのだが、何が悪かったのだろうと考えていると。

フューニャは苛立ちを隠さずにこう言った。

「二週間も妻をほったらかしにして、寂しい一人寝をさせておきながら。帰ってきたその日に、期待する妻を無視して一人でソファ寝とは何事ですか」

「はっ…?」

「それとも出張中、同僚の方とお楽しみだったんですかね?だから可愛くない妻はノーサンキューと?良いでしょう。そっちがその気なら私だって外注してきます」

踵を返して出ていこうとするフューニャを、寝ぼけ頭のままなんとか引き留めた。

「待ってくれフューニャ」

「もう待ちません。あんなに待ったんですから」

「悪かっ…。いや、俺誘ったのに断られたんだけど…?」

あれ?俺がおかしいの?

俺、さっき誘ったよな?断られたよな?

だから諦めて一人で寝てたんだよな?あれ?

「あのさ…フューニャ」

「何ですか」

「俺…別に出張中お楽しみとかしてないからな?」

ルレイアさんじゃないんだから。

行く先々で愛人増やしたりなんて器用なことはしてないし、大体俺にはそんなことは出来ません。

「フューニャと同じで、寂しく枕を濡らして一人寝してたよ」

泣いてはないけどな。さすがに。

比喩だから。

「じゃあ何で帰ってきたのに私を無視するんですか」

「無視してないじゃん…。俺誘ったじゃん」

駄目って言ったよな?フューニャ。

しかし。

「誘われてません」

「…」

「あなたは帰ってくるなり私を無視して寝てました」

…なんか…そう言われると、本当にそんな気がしてくるのがフューニャの凄いところだよな。

そうか。俺は…誘ったと思ったけど、誘ってなかったんだ。

そういうことにしよう。もう。

「…分かった。ごめんなフューニャ。今からでも良いなら…。一緒に寝ようか」

「えぇ。良いでしょう」

なんだか釈然としない気もするが…結果としては思いを遂げられそうなので、満足である。
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