The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
何が辛いって、まず第一に。

「おぉ、おはよ。ルナニア」

教室に入るなり声をかけてきたのは、エルスキー・ミルヴァーレン。

一応、ルナニアの一番の親友ということになっている。

つまり、ルレイアにとってのルルシーも同然の存在…ということになる訳だが。

断じて、有り得ない。

こいつが、この軟弱なお坊ちゃんが、ルルシーの代わり?

片腹痛いわ!というのが俺の本音である。

ランドエルスの同級生は、エルスキーのことを爽やかなイケメンだと評価している。女子生徒からの人気も高い。

先輩後輩問わず、ラブレターをもらったりもしているとの噂。

だか俺に言わせればこんな軟弱男、俺の足元どころか、小指の先程にも及ばない。

ルルシーのような芯の強さもなければ、彼が全身に纏う、黒社会の人間特有の翳りもない。

俺からすればエルスキーは、ただの世間知らずのガキに過ぎなかった。

生まれたときから何の苦労もせず、ぬくぬくとぬるま湯の中を生きてきた幸せなお坊ちゃん。

所詮俺達とは、生きてきた世界が違う。

おまけに、この顔でイケメン?アホらしい。

百戦錬磨どころか万戦練磨の俺でさえ、ルルシーの顔をちらりとでも見たら、ぞくぞくして興奮が収まらないのに。

エルスキーなんて、全裸になったって吐き気がするだけだ。

ついでに言うと、俺にも遠く及ばない。あんな男がいくら愛想を振り撒いたところで、フェロモン散布全開状態の俺を前にすれば、赤子も同然だ。

現在の俺はルレイアではなくルナニアなので、俺の必殺の武器、ルレイアフェロモンは封印中である。

アリューシャからは「お前、それ封印出来たんだな」と言われ。

ルルシーからは「出来ればそのまま永遠に封印しておいてくれ」と言われた。

そんないけずなところも好き。

さて、話がずれてしまったが。

あれこれ言ったところで、ルナニア・ファーシュバルとしての俺は、エルスキーと親友ということになっている。

ならば、にこやかに挨拶を反すのは当然のことであった。

「おはようございます、エルスキー」

顔だけは完璧な笑顔を取り繕うが、腹の中で何を思っていたとしても、それは俺の勝手である。

俺の「おはようございます」の裏には、「馴れ馴れしく話しかけてくんじゃねぇよ」の意が込められていることを、エルスキーは知らない。
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